[ポスター55-5] A専門学校生の終末期看護への知識と態度
シミュレーション学習の成果
【背景】終末期実習において患者との関わりに困難さを感じている学生を支援するために、緩和ケア認定看護師が演じる模擬患者によるシミュレーション学習を導入した。【目的】終末期シミュレーション学習の導入による専門学校生の学習の実態を明らかにする。【実践内容・方法】1.実践内容:事例への援助を自己学習した後、グループで援助方法を再検討し代表者が模擬患者に実践した。終了後、模擬患者から講評と助言を受けた。2.実践方法:1)対象:A専門学校2年生39名と3年生38名。2)分析方法:態度面の測定はFATCOD-FormB-Jを使用し、SPSSを用いて有意水準5%でKRUSKAL-WALLIS検定及び多重比較を行った。知識面は全て自由記載の知識確認テストを独自で作成し、KHCoderで頻出語抽出及び対応分析を行った。3)倫理的配慮:研究の趣旨と方法、匿名性の確保等を説明し同意書の提出をもって同意を得た。B病院倫理委員会で承認を得た。(承認番号2023-04)【結果】有効回答が得られた2年生38名、3年生36名の計74名を分析対象とした。2年生38名を介入群、3年生のうち終末期の受け持ち経験のある学生17名を対象群A、終末期の受け持ち経験のない学生19名を対照群Bとした。態度面では「死について話すことに気まずく感じる」に有意差があり、多重比較で対照群Aと対照群Bに有意差がみられた。知識面では確認テストの事例の状態を介入群は「疼痛や転移によりADLが低下している」患者に、「呼吸状態」を観察し、「思いを聞きタッチング」が必要と捉え、対照群Aは「終末期」の患者に、「酸素投与の確認」をし、「傾聴、疼痛緩和」が必要と捉え、対照群Bは「終末期」の患者に、「呼吸状態から酸素投与の必要を確認」し、「傾聴」が必要と捉えていた。【考察】実習経験のない介入群でも、模擬患者への観察や援助及び助言を受けることで、患者にどのように触れ、声をかけ、何を見るのかなど五感を使った体験から終末期患者のイメージが具体化でき、介入群の終末期患者への前向きな態度の獲得につながったと考える。介入群は知識面でも終末期患者の苦痛に焦点を当てた観察及び傾聴を学習できることが示唆された。対照群Aは、終末期患者への接し方への経験があるからこそ看護師と同様に不安や気まずさを抱いたため得点が低くなったと推測する。対照群は領域実習で様々な患者と関わり、対象の健康レベルに着目し病期を捉え、治療に伴う援助や多職種連携へも視点を広げ学習していた。【実践への示唆】シミュレーション学習により終末期看護に対する前向きな態度と終末期の症状及び状態に関する知識の獲得が可能であるとの示唆を得た。今後、シミュレーション学習を取り入れた介入群においても、臨地実習での終末期患者を受け持つことにより知識面や態度面に変化があるのかを検証し、シミュレーション学習の効果が終末期実習の発展につながるような支援を検討していくことが必要である。