[ポスター55-4] 新カリキュラムにおける看護学生の社会人基礎力の獲得状況の検証
~メタ認知3要因と社会人基礎力3要因の関連性を踏まえて~
【緒言】看護基礎教育においては、2022年に第5次カリキュラム改正が開始され、A校も社会人基礎力を基盤とした新カリキュラム(以下、新カリ)を構築した。社会人基礎力は2006年に経済産業省が提唱した能力群で、2018年に「人生100年時代」を踏まえ見直された。社会人基礎力を高ためるには、自分の能力を客観的に知り、自分がどの能力を伸ばすべきか判断することが有効である。そのため、メタ認知を育むことは社会人基礎力を高めることに繋がると仮説を立て、A校において実証研究を実施した。新カリ導入後の社会人基礎力の獲得状況の検証は新たな課題であり、研究の蓄積がない。そのため、本研究は、今後の教育活動を実効性のあるものとするために大きな意義があると考えた。【目的】新旧カリ生のメタ認知と社会人基礎力の獲得状況を比較検証することで、社会人基礎力を基盤とした新カリを見直し、今後の教育活動改善の一助とすることである。【方法】新カリ生43名と旧カリ生38名を対象に、社会人基礎力3要因(アクション・シンキング・チームワーク)12の能力要素+倫理の13項目の尺度と成人用メタ認知尺度3要因(モニタリング・コントロール・メタ認知的知識)28項目の記述による自己評価調査を実施した。調査期間は202X年4月~202X+3年3月、調査時期は入学時と1・2年次の年度末に計3回実施。分析方法はSPSSVer29を用いFriedman検定を実施し、社会人基礎力とメタ認知の2群間をSpearman相関で確認した。倫理的配慮として、書面と口頭にて研究の趣旨と研究協力の諾否による不利益を受けないことを説明し、回答をもって同意とした。本研究は、A校の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号8)。【結果】Friedman検定の結果、旧カリ生は社会人基礎力3要因に有意差はなく、メタ認知の「モニタリング」にのみ有意差を認めた。新カリ生は、社会人基礎力の「チームワーク」、能力要素では「主体性」を含む9項目に、メタ認知では「モニタリング」「コントロール」に有意差を認めた。Spearman相関の結果、社会人基礎力の「アクション」と新カリ生は「コントロール」を含むメタ認知3要因全てに、旧カリ生は「コントロール」以外に有意な相関を認めた。【考察】各調査で新カリ生のみに有意差があった理由として「主体性」を意識した新カリ導入の成果があったと考える。三宮(2008)は、学習者が主体的に学習に関わる場合にメタ認知が大きく影響力を持つことを指摘している。今回のケースでは、仲間同士の学習がメタ認知を育み「チームワーク」を高めたと考える。更に、学生自身の「主体性」を育むビジョン・ゴールシートを用いた目標管理面接やピア評価の導入が、自分を客観的に知る機会となり、社会人基礎力の獲得に寄与した可能性がある。【結論】本研究の対象はA校のみであり、結果の一般化には限界があるが、新カリ導入が看護学生の社会人基礎力の獲得に寄与したことが示唆された。