[ポスター56-1] 「メッセージ・ツリー」へ思いを込めて
【背景】がん化学療法(以下、化学療法)は、入院治療から外来へとシフトしている。外来では入院治療と比べて患者と関わる時間が短いため、限られた時間内で患者・家族の思いを聴きだすことが難しい。また治療を支える医療者は思いを表出する機会がなかった。さらにこれまで両者の思いを共有する機会もなかった。そこで今回、それぞれの思いを表出する機会を作り、それらを共有できないかと考えた。【目的】外来化学療法患者・家族・関わっている医療者それぞれの思いを多くの人と共有することを目的とした。【実践内容・方法】対象者はA病院で外来化学療法を受けている患者や家族、外来看護師や補助員、医師とした。患者・家族にはピンク色のハート形カードに今の思いや医療者に伝えたい事を記載してもらった。医療者には緑色の木の葉形カードに記載してもらった。それらを約幅5m×高さ2mの大きな木に散りばめ「メッセージ・ツリー」として表現し、院内で最も人通りの多い入り口ギャラリーに11日間展示した。A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号R5-0146)。【結果】患者・家族、医療者からそれぞれ約40枚、計約80枚のメッセージカードが集まった。患者・家族からは「旅行に行きたい」「優しい先生や看護師さんがいるので安心」などのメッセージが寄せられ、小児では絵を描くケースもあった。思いを文字にして表現することが苦手な患者は「書けないけど、思いは込めるから空白のまま飾ってほしい」と白紙のカードを提出してくれた。同様な白紙のカードが数枚あった。医療者からは「いつも病院に来てくれてありがとう。お薬頑張って飲んでくれてありがとう」「あなたの笑顔を守りたい」「点滴、石を穿つ!」などのメッセージが寄せられた。思いが溢れて言葉にできない医療者はスマイルマークをカードに描いてくれた。それらをメッセージ・ツリーとして展示したところ、多くの来院者と職員が一枚一枚のメッセージを読んだり、写真を撮ったり、見た感想を伝えてくれた。しかし展示期間が11日間だったため、その期間に外来治療がなかった患者はメッセージ・ツリーを見ることができなかった。【考察】外来化学療法に来る患者や家族には夢や希望がそれぞれあった。また医療者への感謝が記載されていたことから信頼関係が構築できていると考えられた。医療者は応援していることや寄り添いたいという思いだけではなく、患者・家族への感謝を記載していることが印象深かった。思いを文字にして表現することが難しい患者や医療者が複数いたことは意外であった。【実践への示唆】今後もメッセージ・ツリーの取り組みを継続し、外来化学療法を受ける患者・家族と医療者の思いを多くの人と共有していきたい。しかし今回展示期間に外来治療がなかった患者はメッセージ・ツリーを見ることができなかったことから、今後は展示期間の延長を検討したい。