第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター56群 がん看護に関する看護職の意識

Sun. Sep 29, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:岡本 泰子

[ポスター56-5] がん看護実践能力向上への取り組み

がん看護に対する困難感尺度の活用

古賀 麻子, 安部 陽子, 三宅 ひとみ, 猿渡 直子, 天尾 カオル (九州中央病院)

【背景】A病院は「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けた330床を有する急性期病院である。入院患者数は月平均約900名で、内がん患者は20%である。202X年度よりがんで入院する全ての患者に対し、苦痛スクリーニングを実施することとなり、早期支援のためには看護師のがん看護実践能力の向上が急務であった。そこで東北大学病院の「看護師のがん看護に対する困難感尺度」を参考に、独自の困難感尺度を作成し、当院のがん看護における課題を明確にした。その取り組みについてここに報告する。【目的】看護師のがん看護に対する困難感を測定し、がん看護実践能力向上への取り組みを評価する。【実践内容・方法】測定項目として、以下の2点にフォーカスし、取り組み前後で困難感の変化を分析した。 1.コミュニケーションに関すること2.自らの知識・技術に関すること(身体症状について)対象者:病棟看護師239名 対象者には個人が特定されないよう匿名化し、学術集会で症例報告することの同意を得た。病棟看護師への伝達講習を前提とし、がん看護リンクナースにコミュニケーション技法のロールプレイ、「良いコミュニケーションの事例」の動画視聴や症例検討を、がん疼痛についてe-ラーニングの活用や講義を実施した。【結果】取り組み前の困難感の上位3項目は、コミュニケーションに関する「患者から『死』に関する話題を出されたり、『死にたい』と言われた場合の対応」67.1%、「転移や予後など『悪い知らせ』を伝えられた後の患者への対応」66.1%、自らの知識・技術に関する「がん疼痛のアセスメント・知識・技術について」60.9%であった。取り組み後の主たる結果は「患者から『死』に関する話題を出されたり、『死にたい』と言われた場合の対応」64.6%、「転移や予後など『悪い知らせ』を伝えられた後の患者への対応」62.5%、自らの知識・技術に関する「がん疼痛のアセスメント・知識・技術について」42.1%であった。【考察】今回の取り組みにおいて、疼痛など身体症状に対する困難感は18.8%低下したのに対し、コミュニケーションに関する項目においては明らかな改善は認めなかった。コミュニケーションに関する支援は様々なケースが存在し、短期間の教育では困難感の低下につながらず、OJT教育の場でトレーニングを継続していくことが重要であると考える。【実践への示唆】がん看護実践能力向上への取り組みを困難感尺度で測定し、看護師はがん患者に対するコミュニケーションに高い困難感を感じていることがわかった。がん看護におけるコミュニケーションは多様であり、一度や二度の研修や短期間の経験で実践能力を上げることは難しい。がん看護に関する研修を効果的・効率的に、どのように体系化するかが今後の課題である。