[ポスター56-6] 若年性肺がん患者への看護実践における看護師の困難感の実態調査
【緒言】一般病棟で働く看護師の終末期がん患者のケアに対する困難感尺度の開発の研究で示されているように、一般病棟では終末期がん患者のケアに困難を感じている。今回は、A病院に入院する肺がん患者の約4%に当たる若年性肺がん患者に焦点を当て、ケアに当たる看護師の困難感の実態を調査した。看護師の困難に対する準備や困難感の緩和を図る一助となると考える。【目的】若年性肺がん患者への看護実践における看護師の困難感の実態を明らかにする。【方法】A病院で若年性肺がん患者の看護に携わった経験のある看護師65名を対象に、先行研究を参考に独自に作成した質問紙を用いてデータを得た。数値で得られたものは単純集計し、自由記載は類似した内容をカテゴリー化し分類した。本研究は、A病院倫理委員会の承認を受け実施した(承認番号2023023)。【結果】困難感「そう思う・ややそう思う」の回答率が90%以上の項目は、「Ⅰ、コミュニケーションに関すること」で3項目あり、「患者と家族のコミュニケーションがうまくいっていない場合の対応に困る」が最も高かった。「Ⅱ、自らの知識・技術に関すること」で「私はせん妄アセスメントや治療・ケアに関する知識が不十分であると感じる」の1項目、「Ⅴ、システム・地域連携に関すること」で「身寄りがない患者の在宅医療が困難である」「経済的な問題を抱えた患者への対応に困難を感じる」の2項目であった。「Ⅲ、医師や治療に関すること」「Ⅳ、告知・症状に関すること」「Ⅵ、看取りに関すること」では回答率90%以上の項目はなかった。自由記載からは、家族への介入、看護師の共感疲労、経済社会的問題の3つのカテゴリーが抽出された。【考察】先行研究と同様に、コミュニケーションに関する困難感が多く、その中でも家族に関連する項目に困難感を抱いていた。また、カテゴリーで家族への介入、社会的問題が抽出されたことから、青年期~壮年期の若年性肺がん患者の看護実践には、その人の療養生活のみならず、人生に寄り添う関わりが求められていると考えられる。若年性肺がん患者の周囲には配偶者、親、子、と多くの異なった世代や役割を持つ家族が関わり、家族の中で患者が持つ役割を考え看護実践をする難しさがあると考えらえた。さらに、家族への気遣いも重要であるとともに、独身者や、経済的な問題を抱えている患者への対応など、多様性に考慮した意思決定支援を行う看護実践の困難さがあると考えられた。【結論】若年性肺がん患者の看護実践における看護師の困難感は、患者と家族のコミュニケーションに関する困難感が高い。また、困難感を構成するカテゴリーとして、家族への介入、看護師の共感疲労、経済的社会的問題の3つが抽出された。本研究は、看護師のもつ困難感の調査であり、患者、家族の思いを明らかとしたものではない。今後は、患者、家族の思いに関する調査も検討している。