第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター57群 周術期の看護④

Sun. Sep 29, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:芝田 香織

[ポスター57-1] 自家組織乳房再建にかける患者の思い

周術期を通した思いの変化

村田 寛子, 雨宮 喜美子, 福田 誠子 (がん・感染症センター都立駒込病院)

【緒言】自家組織乳房再建は、腹直筋皮弁法・穿通枝皮弁法など侵襲が大きく、腹部に30~40cmの創ができる術式である。この術式を選択した患者は、強い思いや意思、価値観、決断に至った影響要因があると推察した。先行研究では、乳房再建によって女性としての自信を回復させ肯定的な自己概念を形成する一方で、身体的変化をイメージできず後悔を抱くという否定的側面が明らかにされている。しかし、それは回顧的データからの分析であるため、本研究で感情や記憶が鮮明な周術期の患者に焦点を当て、患者の思いを明らかにすることで看護支援の一助になると考えた。【目的】自家組織乳房再建術にかける患者の思いとその変化を探究し、看護師が患者に寄り添いながら提供できる効果的な看護支援を明らかにする【方法】研究方法は、手術後6~7日目の患者に半構造化面接による質的記述研究を行った。同意を得られた患者に時系列で語ってもらい、逐語録を作成した。分析方法は、逐語録から心理的変化の内容を抽出し、抽象度を上げカテゴリー化した。本研究はA病院倫理審査会の承認(2023ー12号)を得て個人が特定できないよう配慮し実施した。【結果】研究参加者は一次一期穿通枝皮弁法を選択した40~50歳代の女性3名。328個のコードから50個のサブカテゴリー、15個のカテゴリー、10個のコアカテゴリーが抽出された。【考察】術前は〈恐怖・苦悩・葛藤〉〈手術への後押し〉〈自家組織乳房再建の強い思い〉のコアカテゴリーから、がん告知のショックと再建手術の難しさに直面し、複数の選択が迫られる中、リスクを覚悟し自己決定した背景に患者の強い思いが伺えた。術直後は〈身体的精神的辛さ〉〈術後の支え〉〈辛さを乗り越え自家組織乳房再建で良かった〉のコアカテゴリーから、疼痛や体動制限がある中で看護師の献身的ケアが患者の気力を奮い立たせ、肯定的な意欲の支えとなっていた事が示唆された。退院前は〈新しい身体への否定的感情〉〈乳房の重要性の気づき〉〈新しい乳房の受け入れ〉〈満足度の高い乳房再建〉のコアカテゴリーから、術前との身体的ギャップにより新たな不安も出現したが柔らかさ、温かみ、自然な下垂という自家組織乳房再建のメリットが新たな乳房の受け入れに繋がっていた事がわかった。【結論】自家組織乳房再建術を受ける決断をした患者に関心と共感をもち、安心を提供できる看護師の献身的なケアが患者の肯定的な認識維持に寄与し、満足度の高い乳房再建に繋がる可能性が示唆された。一方で、本研究は一次一期穿通枝皮弁法3名に限定されており一般化には限界があった。