[ポスター57-2] 喉頭気管分離術を受けた患者家族の思い
手術室看護師による術前の支援に向けて
【緒言】喉頭気管分離術は、発声ができなくなる一方で反復する誤嚥性肺炎の症状緩和や経口摂取が期待できる。嚥下障害や呼吸障害を有する難病患者や家族は、喉頭気管分離術の決定までに、なかなか決めきれず、症状の悪化に伴い急遽手術に踏み切る場合がある。そのため、手術室看護師は手術前訪問での関わりが十分行えない状況であった。今回、喉頭気管分離術を受けた患者の家族にインタビュー調査を行い、手術後の家族の思いや手術室看護師の術前支援について明らかにした。【目的】喉頭気管分離術を受けた患者を支える家族が、術後に感じた思いを明らかにする。【方法】喉頭気管分離術後、1年程度経過した患者を支える家族3名に、半構造化面接を行い質的記述的に分析した。尚、3名の患者は多系統萎縮症であり、胃瘻交換で再入院している。研究に際し、A病院倫理委員会で承認を受けた。(番号TS-R05-016)研究参加者に、プライバシーの保護や学術集会で発表することを書面で説明し、同意書に署名を得た。【結果】逐語録の内容から、51個のコードが抽出され、13個のサブカテゴリーから6個のカテゴリーにまとめられた。内容は、病気や症状の進行による不安な思いや、手術説明について感じた思い、手術により生命維持や食事摂取への期待や希望する思いが抽出された。また、手術後に患者との療養生活を経て、一緒に生活できていることや経口摂取が可能になったこと、症状の心配からの解放など、手術したことを満足に感じている思いが多く聞かれ、退院後の生活についての思いと、手術を受けて、術前とのイメージの変化や手術前にしておきたかったことなどの思いが抽出された。【考察】多系統萎縮症は、病状から中枢性無呼吸で突然死を来しやすいため、家族は自宅で毎日不安を抱えて過ごしていた。喉頭気管分離術は、生命維持だけでなく肺炎への予防や経口摂取への期待があるため、家族の意思決定が促進されたと考える。また術後、家族は患者の経口摂取が可能となり、症状による不安な日々から解放されたことで、手術への満足に繋がっていると考える。一方で、退院後の安心した生活の中で、家族は『声』への寂しさが表面化され、後悔を感じていると考える。そのため、手術室看護師による術前の支援として、A病院では、手術の日程が決まった後に手術室看護師が関わることが多いが、今後は患者家族が手術を検討している段階から、病棟看護師と共に手術室看護師も関わり、手術による特徴について、イメージが持てるように伝え、意思決定への支援をしていくことが重要である。【結論】家族は、手術に満足している一方で、声への喪失から手術前に声の録音などしておけばよかったという後悔を感じていると考える。今後は、患者家族が手術を検討している段階から、手術室看護師も関わっていくことで、患者家族が望む意思決定が行えるよう支援していくことが重要であると示唆された。