[ポスター58-3] 終末期に向かうYA世代女性がん患者への意思決定支援
~看護実践上の困難さや工夫に焦点を当てて~
【緒言】A病院B病棟は女性がん患者が多く若年成人(以下YA)世代への看護を経験してきた。YA世代は自分の死を考えることは容易ではなく、自らの思いの核心を言語化しない特徴がある。そのため終末期に向かう過程で十分な話し合いができず、意思決定支援に困難を感じることも多い。今回、終末期に向かうYA世代女性がん患者に焦点を当てて看護実践内容を明らかにしたいと考えた。【目的】終末期に向かうYA世代女性がん患者への意思決定支援における看護実践上の困難さや工夫などの実践内容を明らかにする。【方法】対象者はA病院B病棟に従事し、終末期に向かうYA世代女性がん患者への意思決定支援の経験がある臨床経験5年以上の看護師とした。対象者にインタビューガイドを用いて半構成的面接を行い質的記述的に分析した。本研究はA病院の医学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号A-114299)。対象者に研究目的、参加の自由意思、個人情報保護等について書面と口頭にて説明し、同意を得た。【結果】参加者は女性9名、平均年齢37歳、平均臨床経験年数13年であった。看護実践上の困難さは[会話のキャッチボールが難しい][自己表現が苦手で心を閉ざすため踏み込めない][繊細だからこそ、関係性構築の難しさ][同世代であるが故の障壁][今をどう生きるかを優先し、意思決定に影響][終末期を受け入れられないため最期について話せない]の6つのカテゴリー、看護実践上の工夫は[何気ない日常から関係性を築く][少しずつ核心に迫る][同世代の強みを生かして関わる][距離感を大切にし患者の意思を尊重する][看護師としてあるべき姿を意識する][家族との関係性を見極めて関わる][患者の意向を少しずつ話題にし状況を整理する][終末期に向かう現実に寄り添う]の8つのカテゴリーであった。【考察】YA世代女性がん患者に対しては、母・娘のように複数の立場があることを意識し様々なコミュニケーションスキルを用いていた。一方で、時には患者の話さないことを意思と捉え、距離を置いていた。またYA世代は、結婚し次世代を育てる時期であり、意思決定能力を持ちながらも、今を生きることに精一杯で自己決定に時間がかかることが推察された。それ故、タイミングを逃さず、距離感を意識しながら意向を聞き、患者の最善を考える必要があると考えた。さらに参加者は、患者家族の治療への強い思いから終末期看護に難しさを抱えていた。人生経験が少ないYA世代だからこそ、希望の存在を捉え最後まで寄り添う必要があると考えた。【結論】終末期に向かうYA世代女性がん患者への意思決定支援では、今をどう生きるかを優先し終末期を受け入れられず自己決定に時間がかかることを念頭に置き、患者との距離感を意識し、同世代としての強みを生かして関わる工夫が見いだされた。患者家族に必要な情報提供を行い、状況を整理し、終末期に向かう現実に寄り添う看護実践があった。