[ポスター6-2] 認知症患者の希望を実現するための看護
カンファレンスから得られた成果
演題に関しては、倫理的配慮をし、A病院の倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号098)【背景・目的】A病院の緩和ケア病棟では、年々認知症患者の入院が増えている。苦痛を緩和し、その人らしく過ごすには、本人の希望を医療者が同じように理解することが大切となる。患者の意志表明や実現にむけて対応に悩んだ2つの事例から、どのような視点や介入により患者の意思が尊重され、実現するにはどのような関りが効果的であったか分析し、認知症患者の希望が実現されるケアについて示唆を得る。【方法】患者及び家族の言動、苦痛の有無等の変化を診療録及び看護記録から情報収集した。看護支援と患者の状態や変化を8回程のカンファレンス前後での変化を比較した。(事例)A氏85歳 脳腫瘍 認知症 腫瘍による自壊創あり。否定的な言葉や落ち着きのない行動の原因が、痛みなのか不明確であった。B氏92歳 甲状腺がん 脳血管障害 経鼻胃管チューブよりホルモン補充薬剤投与。抜去予防のためミトン使用。手振りや言葉で胃管チューブやミトンの解除を訴えた。身体的構造から、経鼻胃管チューブの再挿入は困難と判断されていた。【実践内容】A氏の苦痛の原因のとらえ方が看護師により異なっていた。どのような状況時は身体的苦痛とし、薬剤を使用するか、具体的な事項をカンファレンスで決定した。薬剤効果を評価し、医療者の理解が間違っていないか、A氏の変化を観察・記録し評価、修正した。B氏は、胃管チューブを抜去しホルモン補充薬が投与できなくなった場合、影響がどれ位の期間で現れ、どの程度なのか不明確であった。高齢、病状変化もあり、本人の望むチューブやミトンからの解放と身体への影響が論点となりカンファレンスした。家族の迷いも強く、看護師が何度か対話し家族間で話し合えるよう調整した。【結果】A氏は薬剤の副作用は認めず、徐々に安定した日々を過ごした。B氏はバイタル測定時を活かし1時間程の解除から開始し、次に夜間のみミトンを使用、その後解除に至った。【考察】言葉でのコミュニケーションが困難でも、医療者が患者のわずかな違いや程度を共通認識することが重要である。診療記録だけが全てではなく、個々の言葉のとらえ方の相違もあり、共有のためにカンファレンスは必須であった。意志をくみ取ろうと、細やかな観察、実践、評価を繰り返したことで、A氏の行動の意味を理解するまでに至り、苦痛緩和につながった。身体抑制に関しては、治療や生命に直結するため解除に躊躇する。しかし医療者が倫理的に判断し、患者の意思を実現するために常にこれで良いのか考えねばならない。B氏の少ない言葉の中で希望を表出し、カンファレンスを繰り返したことで、希望する拘束解除の実現につながった。【実践への示唆】自施設にあった客観的苦痛評価スケールの導入、及び看護記録の充実、認知症患者の希望の実現のための看護の可視化が課題となった。