[ポスター6-4] 末期肺がん患者と家族支援の事例報告
退院前病棟訪問を行った外来看護師の介入
【背景】在院日数の短縮化に伴い,患者と家族が在宅療養をイメージできないまま退院を迎えることも少なくない。入院治療を経て,外来通院の経過を辿る患者と家族の看護介入をした。【目的】末期肺がん患者の退院前病棟訪問を通して家族の危機状態のプロセスを明らかにし,家族支援を目的とした外来看護師の役割を検討した。【実践内容・方法】対象:60歳代男性と妻。2人暮らしで子供無し。肺腺癌Ⅳ期。仙骨転移に緩和照射後1次化学療法中。患者と妻へ自宅退院への不安因子に関する半構成的インタビュー用質問紙(以下質問紙)を作成した。病棟訪問前に外来看護師間で病状等についてカンファレンスを実施した。そして,退院前病棟訪問を行った後,病棟看護師と退院後の問題点の情報共有を行った。質問紙を用いて7場面(初診時,告知時,治療選択時,化学療法入院中,退院時,退院後初回受診時,入院化学療法4コース目終了時)で,半構成的インタビューを患者と妻に行い,家族の支援を行った。作成したプロセスレコードの内容を危機モデルの時期と照らし合わせ,妻の言動の意味内容を損なわないようにコード化しカテゴリーを抽出した。A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号 倫5)。【結果】初診時『最初の衝撃』から『承認』『現実認知』『適応』へと変化した。妻の言動からは,「病気の不安」と「精神的不安」の2つのカテゴリーが抽出された。【考察】初診時,医師よりがんを疑う説明を受け,患者と妻への介入を早期から行い,家族が置き去りにならないよう看護師間での周知,医師との連携を図った。告知時,治療選択を拒む発言が多く聞かれた。治療選択時期に入り,患者と妻の気持ちに相違がない事や,病棟訪問時,他者のいない場所での患者との対話は患者の気持ちを表出できる場となり,患者を支える姉の存在を知り,家族のモビールバランスの確認ができた。それぞれの気持ちに寄り添い対応していくことを心掛け,妻の気持ちが言える場を継続的に準備した。治療選択,治療開始と進んでいく中で,患者の気持ちを話せる場所,時間は重要であり,退院前病棟訪問により,心配事を具体的に聴くことができた。入院中,面会時間内に外来看護師が妻と面談することが難しい状況であったが,電話訪問時,病棟訪問時,病棟看護師と連携し情報共有することで患者の気持ちを知り,家族に対してもスムーズな対応を心掛けたことが安心して治療継続へ繋げることができると考える。【実践の示唆】告知時,治療選択時,治療開始後,治療中において気持ちが揺れ動く時期がある。その都度,患者と家族へ寄り添えるよう医療者間での情報共有とタイミングを逃さないように介入した。外来看護師が,退院前病棟訪問を行ったことは,病棟との連携も図れ,患者と妻との信頼関係の構築や,安心して退院後の在宅療養へ繋がったことが示唆された。