[ポスター6-5] 闘病のすえ終末期に移行したがん患者家族の思い
医療的ケアが必要な事例を通して
【緒言】A総合病院B病棟は消化器内科・外科病棟の混合病棟である。B病棟ではがんに罹患し、治療をしながら在宅療養を継続されている患者が多い。病状の進行に伴い、積極的な治療が困難な状態となり、終末期治療へ移行する患者がいる。患者は入院生活の中で「家に帰りたい。」「家で死にたい。」と思いを吐露されることがある。しかし、家族は漠然とした不安を抱え、自宅に退院できないことがある。在宅療養するにあたり、日常的に必要とされる点滴管理や吸痰、疼痛緩和目的の麻薬管理など医療的ケアが多く負担が大きい。そのため、家族の思いを明らかにすることで、家族看護に繋げることができると考えた。【目的】医療的ケアが必要となり入退院を繰り返しながら在宅療養を継続できた患者を支えた家族の思いを明らかにする。【方法】202X年4月から202X年3月までの、闘病のすえ終末期に移行したがん患者の家族を対象とした。 プライバシーを確保できる個室で研究者と共同研究者で半構造的なインタビューを行った。研究対象者の同意を得た上でICレコーダーに録音した。逐語録を作成し、療養生活に関する内容や時期に注目しコードを抽出、サブカテゴリー化し、カテゴリー化した。A総合病院の研究倫理査委員会の承認を得て実施した(承認番号R-0504)。【結果】分析の結果、80のコード、11のサブカテゴリー、5つのカテゴリーが生成された。〈がんを受け入れ患者と共に踏み出した治療への第一歩〉〈治療にかけて可能性への切望と苦悩〉〈患者の望みを叶えてあげたいと思う家族の自問自答〉〈患者の在宅療養を選んだ決め手〉〈在宅療養による患者・家族のQOLの向上〉のカテゴリーが抽出された。【考察】病気が診断された時期より、〈がんを受け入れ患者と踏み出した第一歩〉〈治療にかけて可能性への切望と苦悩〉とあるように、絶望感を抱えながらも、心配し病院受診を促し、支えることを決心していた。薬物治療中、患者と家族は病状進行による苦痛の出現と治療による副作用により、治療を継続してもよいのかと不安に感じ、終末期を迎える中で、これまでの生活の中で築き上げてきた関係性から、患者の思いを叶えてあげたい気持ちが強くあった。家族の持っている力を引き出しながら、患者と家族、医療者との関係性を密にし、療養生活を支える必要性があると考える。また〈患者の在宅療養を選んだ決め手〉としてコロナ禍による面会制限が影響し、家族は患者との面会ができなくなり結びつきを感じる機会が少なくなってきている。そのため、側に寄り添いたい思いが強く、在宅療養を選択する意思決定の決め手の1つになっているのではないかと考える。【結論】今回の研究は限られた集団に対する調査結果であり、一般化出来ないことが研究の限界とする。今後、告知された時から早期に医療者として患者・家族と関わりを持っていく必要性があるとこの研究で示唆された。