第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

講演情報

ポスター

ポスター60群 看護の質向上のための取り組み②

2024年9月29日(日) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (展示ホール)

座長:野口 香

[ポスター60-3] 外来における骨粗鬆症の啓蒙活動の実践報告

年代別にリーフレットを設置して見えたこと

寺石 友香, 木村 乃里子 (札幌徳洲会病院)

【背景】A病院の周辺地域の特性として、5つの地域のうち4つの地域で60歳以上の割合が35%以上であり、骨粗鬆症患者は潜在的にいると予測される。外来患者からは「年齢的に骨折しやすいのは仕方ない」「骨折をきっかけに骨粗鬆症と知った」という声が多数聞かれており、骨粗鬆症は予防と治療が重要であることの認知度が低い可能性が示唆された。そのため骨粗鬆症に関する情報と年代別の予防ポイントをまとめたリーフレットを院内ロビーへ設置し啓蒙活動を開始した。【目的】骨粗鬆症予防の啓蒙ブースの設置後、外来患者が骨粗鬆症予防に興味関心をもつきっかけとなっているか実態を調査し、今後の活動を検討する。【実践内容・方法】202x年1月6日~1月31日の期間、リーフレットを各年代1日10部ずつ設置し、外来終了後に減少数を数えて単純集計した。外来看護師29名へ、匿名化・情報管理・学会発表に関する説明書と質問用紙を配布し骨粗鬆症の「疾病・治療・予防・骨密度検査についての質問」と「リーフレットに関する感想」について患者からの声を聴いたことがあるか調査し質問用紙の提出をもって同意とみなした。【結果】20代~30代のリーフレット減少数は6枚。30~40代は19枚。60代以降は51枚だった。質問用紙の回収率は41.4%でリーフレットに関する患者からの声はなかった。骨密度検査については「検査の頻度」「何科で検査できるのか」「骨密度の数値について」の質問を受けた看護師が3名。治療については「自己注射について」の質問を受けた看護師が2名。予防については「転倒予防・食事」の質問を受けた看護師が1名だった。【考察】60代以降の骨粗鬆症予防は他年代に比べて関心が高いことが明らかとなった。松井らは、前期高齢者の骨粗鬆症治療の継続要因の調査結果にて、「骨粗鬆症に伴う問題を自分にも降りかかることとして認識することで治療の必要性を感じていた」とし、その背景には「骨粗鬆症により生じた骨折や脊椎の変形に苦しむ身近な人の経験があった」と述べていることから、60代以降は周囲からの情報や、経験をきっかけに骨粗鬆症予防や治療に興味を持ちやすいことが示唆される。60代以降に比べ20~50代のリーフレットを手に取った人数は少ない。骨粗鬆症は骨折のない段階から積極的に予防や治療に取り組むことが推奨されており、骨密度を維持する年代と減少が始まる年代への効果的な啓蒙方法を検討する必要がある。また、患者の声を聴いた看護師は3名にとどまったが、リーフレットの減少数を合計すると76名が自ら骨粗鬆症に関する情報を得ていた。啓蒙ブースの設置により啓蒙対象者の幅が広がり来院者が自ら骨粗鬆症に対するセルフケアを考えるきっかけになったと考える。【実践への示唆】今後は骨粗鬆症に興味を示した方への個別支援方法の構築と20~50代への啓蒙方法を再検討する。