[ポスター62-1] 認知症高齢者に対するせん妄ケアの実践や取り組み
急性期病院に勤務する看護師へのインタビューから
【緒言】急性期病院で入院・加療をする認知症高齢者は年々増加している.また,認知症はせん妄の発症リスクの一つに挙げられている.安全な療養のためには,せん妄の発症を未然に防ぎ,せん妄状態に陥っても早期に離脱するための看護ケアが重要である.そこで、急性期病院に勤務する経験豊かな看護師が行うせん妄に関する看護活動を明らかにしたいと考えた.【目的】経験豊かな看護師が、認知症高齢者に対して実践しているせん妄ケアに関する活動や取り組みを明らかにする.【方法】急性期病院に勤務する経験豊かな看護師(JNAラダーⅣ相当)3名を対象に半構造化面接を実施.面接時間は1人30分~60分.インタビュー内容から逐語録を作成し,データを抽出し、意味内容の類似性に基づきカテゴリ―化し,サブカテゴリ―,カテゴリ―に分類した.なお,本研究はA大学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号2023-11).【結果】 対象者の語りから,173のデ―タ,18の〈サブカテゴリ―〉,4の≪カテゴリ―≫が抽出された.〈入院前の患者の生活に関する情報収集〉や〈些細な変化を見過ごさない〉〈看護師間の経験の差が出ないようにカンファレンスを行う〉など≪せん妄ケアの実践に向けたアセスメント≫,〈個に合わせたオリエンテーションの工夫〉など≪ベッドサイドでの看護実践≫が行われていた.せん妄を発症しても〈患者の不安や思いに寄り添う〉〈基本的な看護の実践〉など≪せん妄発症後の看護ケア≫の充実に努めていた.また,〈新人看護師や経験の浅い看護師への教育活動〉や〈せん妄やコミュニケーション技術などの教育機会の活用〉など≪ケア向上のための学習活動≫に積極的に取組んでいる.【考察】1.経験豊かな看護師は、個に合わせたせん妄ケアの実践のために、個の特性や生活歴・ライフスタイルを細やかに情報収集して個別的なケアを行っており、経験が少ない看護師にも伝達していた。2.経験の豊かな看護師は、予防していてもせん妄は生じることを念頭に置き,療養上のイベントや治療の進行に合わせて異常の早期発見のための観察を行っていた.新人や経験の浅い看護師が観察した内容も大切に引き出し,勤務体毎にチームでラウンドカンファレンスをするなどせん妄の早期発見に努めていることがわかった.3.経験の豊かな看護師は,院内や院外の教育機会を積極的に活用し、自分自身のスキルアップに努めるだけではなく、病棟全体のレベルアップに努めていた。【結論】経験の豊かな看護師は、せん妄は予防が大切であると認識しており、その高齢者の生活や背景を強く意識しながら環境を整えたり、より個別性が高いケアの提供に努めている。また、痛みや清潔、排泄などの基本的な看護支援を大切にしていることが明らかになった。さらに、教育の機会を積極的に活用して自己研鑽に努めており、経験の浅い看護師に対して教育的に関わり、病棟全体のケアのレベルが上がるように努めていた。