第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター62群 せん妄への対応

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:井上 光子

[ポスター62-5] 認知症・せん妄迅速対応チームの結成と課題

淡路 将大, 保々 さとみ, 茶木 孝至, 川戸 幸志 (東京都立墨東病院)

【背景】三次救急医療機関であるA病院では、急性期治療が優先され、認知症やせん妄に対しては症状が悪化してから身体拘束や抗精神病薬の投与を主とした対応が行われる傾向にあった。入院患者の認知症・せん妄に迅速に対応し適切なケアを提供していくためには、病棟看護師と認定看護師の連携が不可欠である。そこでRapid Response Systemを参考に、認知症やせん妄が疑われる患者の早期介入のために認知症看護認定看護師と精神科認定看護師で「認知症・せん妄迅速対応チーム(以下NINSEN)」を結成し活動を開始した。その結果を報告する。【目的】NINSENが認知症やせん妄が疑われる患者へ迅速に対応し、病棟看護師に非薬物的介入(以下ケア)を提案できる。【実践内容・方法】倫理的配慮:A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た。NINSENメンバーは認知症看護認定看護師2名、精神科認定看護師2名で計4名だった。NINSEN活動の目的と依頼の基準を病棟看護師へ周知後、202X年9月より活動を開始した。病棟看護師の依頼によりメンバーが出動し、患者とコミュニケーションをとりながら認知症、せん妄のアセスメントと症状に対するケアを検討し内容を病棟看護師と共有した。NINSEN依頼があった患者を一覧化し、メンバー間で共有した。【結果】202X年9月~3月のNINSEN依頼は57件で、入院3日以内の依頼は27件だった。患者は認知症が26件、せん妄22件(重複3件)、その他12件だった。事例では「不穏」の理由により依頼があった患者の状態をアセスメントしたところ、術後疼痛や脱水が認知症の行動・心理症状(以下BPSD)やせん妄の要因として考えられ、鎮痛薬の使用や脱水の改善について提案した。依頼があった患者の多くは見当識の低下があった。そこで、時計やカレンダーの設置と、患者の入院前の生活習慣に関する情報を家族や介護者に確認することを提案した。身体拘束が実施されている患者に対しては、身体拘束がBPSDやせん妄の要因となることを踏まえて、身体拘束解除に向けた病室環境の工夫や点滴類の早期抜去について病棟看護師と検討した。提案したケア34件を類似性で分類した結果、11カテゴリーとなり、「苦痛(不快刺激)の軽減」が最多で、次いで「リアリティオリエンテーション」「環境調整」だった。【考察】認定看護師をチーム化し、病棟看護師と連携したシステムとして構築したことで、認定看護師の視点と専門的知識を活かした多岐にわたるケアの提案に繋がった。入院3日以内の依頼が47%であり、入院早期に認知症やせん妄に対応することの必要性が病棟看護師に認識されてきている。【実践への示唆】認定看護師が患者の認知症やせん妄に迅速に対応することで、身体拘束や抗精神病薬の投与以外のケアを病棟看護師に提案することが可能である。病棟看護師のケアの実践能力の向上のために、認知症やせん妄の基本的な知識を習得できる教育体制を整備することが今後の課題である。