[ポスター64-1] 染色体異常児の自宅退院を可能にした家族への看護実践
ー家族の願いを信じて紡ぐー
【緒言】13トリソミーは1年生存率5~10%と他の染色体異常に比べて生存期間が短い傾向にある.中には一度も家に帰ることなく一生を新生児医療施設で過ごす児も多い.生命の時間的制約がある中,家族の治療への意思決定や思いを尊重する看護介入の実践知の蓄積が望まれている.【目的】13トリソミー児を持つ家族が自宅退院を実現できた事例について,今後の退院支援への示唆を得るために自宅退院を可能にした看護実践の内容を明らかにする.【方法】 看護実践の対象:Aちゃん(0歳)家族成員(父親,母親) 概要:家族構成はAちゃん,両親,兄弟(4歳,1歳)の5人.出生後Aちゃんに身体奇形が見つかり新生児センターに入院し13 トリソミーの診断となる.医師からは余命は短く予後不良であると説明され,両親の表情が暗い状況が続いた.入院3か月目に状態急変があり両親は動揺したが,入院4か月目に「自宅退院」を希望し入院6か月目に自宅退院となる.入院中はNICU/GCU担当看護師(以後PNS)B,Cの2名が共同し看護介入を実施した.本研究は入院から自宅退院までの期間を分析する.分析にあたっては山本らの「ケアの意味を見つめる事例研究」の方法を用いた.PNSの看護記録と看護介入の経過をテキストデータとし家族の希望にそった看護実践を可視化する事を意図し分析を行った.PNS2名,先輩看護師1名,退院支援看護師1名,家族支援看護師1名を含む5名で検討した.語り合いを用いた質的分析手法により《大見出し(看護実践の意図や意味)》〈小見出し(看護実践のこつ)〉へ納得がいくまで語り合い洗練した.倫理的配慮: 両親から研究同意を得た後にD病院看護部倫理審査委員会の承認をえた.【結果】入院当初は《母親を知る》ために〈母に寄り添う〉〈会話の糸口を探す〉ように関わった.母親と関わる中,面会回数の少ない父親との気持ちのずれが見て取れた.急変も重なり《家族の気持ちを橋渡し》することが重要と考え〈両親の橋渡し〉〈医師と家族との橋渡し〉を実践した.疑問点や不安な気持ちを抱えず共に考える旨を繰り返し伝えたところ「自宅でAちゃんと家族と過ごしたい」との願いが明確となった.そこで《家族の希望を叶える》ために〈家の生活をイメージできる支援〉〈家族の力を信じ見守る〉関わりを実施し自宅退院となる.【考察】Aちゃんの自宅退院を可能にした要点として,PNSが家族の橋渡しとなり家族成員間の関係調整を実施した事が考えられる.当初は「Aちゃんに対する気持ち」の差が家族内で生じていた.介入後からは会話量が増え,お互いの不安や本音を分かちあう事の出来る「情緒的支援者」となり,問題の共有, 解決をする力が発揮されたと考える.さらに,PNSは家族の願いを受け止め関わった.この関りは家族へ安心と自信を与え「家族の力」を高める事に繋がったと推測する.【結論】家族の関係性を捉え願いを信じて看護実践を行う事は「家族の力」を高め,自宅退院を可能にする要因となりうる.