第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター66群 対象と向き合う看護職の意識③

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:野口 香

[ポスター66-6] 救急看護師が経験した患者に向き合う原動力

-COVID-19発生初期を振り返って-

小谷野 海斗, 小海 亜美, 武田 千鶴 (東邦大学医療センター佐倉病院)

【背景】新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19と略す)発生初期において、看護師は、患者対応を行うにあたり不安や恐怖、ストレスを感じていた一方で、使命感を持ち肯定的に対処する者もいたといわれている。そこで、看護師がCOVID-19患者に向き合っていた背景には、どのような原動力が存在していたのかを明らかにし、今後起こりうる不測の事態に看護師が向き合う際の示唆を得たいと考えた。【目的】COVID-19発生初期にA病院救急看護師が経験した患者に向き合う原動力を明らかにする。【実践内容・方法】本研究は質的記述的研究デザインを用いた。COVID-19発生初期にA病院救急外来で勤務し、COVID-19患者の初療を担当していた看護師7名に対し、インタビューガイドを用いた半構造化面接法によりデータ収集を行った。インタビューでは、看護師実務経験年数と救急外来での実務経験年数を伺い、COVID-19発生初期の患者に向き合う原動力について自由にお話いただいた。得られたデータをもとに逐語録を作成し、文脈ごとにコードを抽出、コードを類似性に従って統合し、サブカテゴリー化、カテゴリー化した。本研究は、A病院研究倫理委員会の承認(承認番号:A22053)を得た上で実施した。【結果】研究参加者の看護師経験年数は、平均18.1±5.4年であり、救急外来での実務経験年数は、平均7.7±2.7年であった。研究参加者1名に対するインタビュー時間は、平均17.0±2.4分であった。COVID-19患者に向き合う原動力に焦点を当て分析をした結果、〈看護師としての使命感〉、〈自分の信じる看護観に従った〉、〈仕事として割り切っていた〉、〈いつかは終わるだろうという思い〉、〈労働環境の充実〉、〈周囲から受けた前向きな影響〉の6のカテゴリーによって明らかにされた。 【考察】研究参加者には、もともと持っていた看護師としての理想の姿や信念があり、それがCOVID-19の流行拡大という不測の事態によって明確に表出され、COVID-19患者に向き合う上で一つの軸となっていた。また、ともに働く救急外来スタッフの存在や、家族からの理解・サポートが得られていたこと、資源の充足や確実な休息の確保はCOVID-19患者に向き合うことを後押しし、前向きな原動力を形成していたと考える。一方で、責任感や使命感といった前向きなものだけではなく、“仕事だから”と割り切り、諦めることで、様々な思いや考えから解放されることに繋がり、それもまたCOVID-19患者に向き合うための原動力のひとつであったといえる。【実践への示唆】COVID-19患者に向き合う原動力には、看護師としての使命感や看護観といった内的な因子に加え、周囲からの心理的・物理的な支援が関係していたことが明らかとなった。共に働く仲間の存在や、家族のサポートといった周囲からの支えに加え、自分自身が何を大切に看護を行っているのか意識し、日頃より自らの看護観を醸成することの重要性が示唆された。