第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター66群 対象と向き合う看護職の意識③

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:野口 香

[ポスター66-5] 外来における臨床倫理教育活動の現状調査

松田 礼美, 鍋島 あゆみ, 中所 菊代, 東野 幸絵, 松森 恵理, 中島 せい子 (関西医科大学附属病院)

【背景】社会情勢や価値観の多様化により、意思決定のプロセスと合意形成のあり方を倫理的視点で検討することが求められており、A大学病院では、202X年看護部臨床倫理委員会が発足し、各部署に臨床倫理リンクナースが配置された。外来看護師は経験10年以上が94.12%であり、倫理に関する教育・実践の機会がなかった。4年前にA大学病院外来看護師対象に「急性期病院における役割意識に関する調査」を実施し、倫理問題に対する役割の必要性を認識しているが、知識の乏しさから、実践に至っていない状況が明らかになった。そこで、臨床倫理を実践できる看護師の育成のために、2年間の教育活動を行った。【目的】臨床倫理に関する教育活動の成果を明らかにし、今後の臨床倫理教育活動への示唆を得る。【実践内容・方法】1.研究期間:202X年5月1日~202X年2月29日2.研究対象者:A大学病院外来看護師82名3.研究デザイン:質的記述的研究4.研究方法:基礎的な倫理に関する学習会への参加、カンファレンスを行った看護師に対し、「臨床倫理や意思決定支援への不安と課題」を自由記載した質問紙から得られた質的データをコード化し、サブカテゴリー、カテゴリーを抽出した。5.倫理的配慮として、研究参加は自由意思であり、質問紙の提出をもって同意とした。また、A大学病院の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号A-2023064)。【結果】研究協力に同意が得られた68人のうち有効回答率は75%であった。質問紙より不安に関するカテゴリーは、【臨床倫理カンファレンスをファシリテートする自信のなさ】、【倫理分析の方法の理解不足】、【患者との関わりへの自信のなさ】、課題に関するカテゴリーは、【臨床倫理分析のスキル不足】、【患者と家族の自己決定を促す力を発揮するスキル】、【多職種・他部門との調整が困難】に分類でき、それと同時に肯定的な内容として【倫理的課題への前向きな取り組みついて】に分類できた。【考察】今回の教育活動の意識調査において、看護ケアの提供に躊躇してしまうことは、知識の乏しさに伴う能力不足に加え経験値の低さが要因と考えた。その中で、臨床倫理に取り組もうとする前向きな気持ちが混在しており、臨床倫理と向き合う困難さに直面した一方で、患者に寄り添った看護を提供したいという思いが取り組みへの意欲に繋がったと考える。今後の教育活動として、臨床倫理に関する基礎的知識の普及と実践力を高める教育が不安要素の緩和に繋がる。さらに、身近な倫理問題への気づきを相談できる環境作りと、それに対応できる人材育成が課題である。【実践への示唆】今後も教育活動を継続することで、臨床倫理の取り組みが促進し、看護師はアドボケーターとしてチーム医療や患者の架け橋となることができる。倫理的課題については、治療やケアの意思決定場面に多く関わる外来看護師の倫理的知識と実践の向上により患者にとっての最善を実現できる。