第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

Presentation information

ポスター

ポスター19群 疾病・障がいとともに暮らすことへの支援

Wed. Nov 9, 2022 9:30 AM - 10:30 AM ポスター会場 (国際展示場)

座長:高木 真希

[ポスターM-19-4] 重症心身障害者の直接マスクによる人工呼吸器管理

-マスク固定用ベルトの改良を試みて-

坂本 祐子, 大黒 咲希, 高松 いと子 (徳島赤十字ひのみね総合療育センター)

Keywords:永久気管切開孔、カニューレフリー、人工呼吸器管理

【抄録】
【目的】高二酸化炭素血症により人工呼吸器管理が必要となった重症心身障害者が、カニューレフリーの状態で永久気管切開孔に直接マスクを当て人工呼吸器を装着する方法を導入することになった。今回、人工呼吸器管理を行うために作成したマスク固定用ベルトの有用性について考察する。【方法】30 代男性、脳性麻痺、11 年前に喉頭全摘術を受け、カニューレフリーとなった。改良ベルトを使用したA 氏の状態と職員の評価をもとに改良ベルトの有用性について分析を行った。A 病院の倫理審査委員会の承認を得たあと、本人と家族に意思決定の自由、プライバシーの保護等について口頭と書面にて説明し同意を得た。【結果】気切孔周囲にマスクが適度な圧で密着でき、調整がしやすいという視点で試作品を作り改良を行った。ベルトの装着のしやすさ、装着にかかる時間については約72%の職員が改良前のベルトよりも優れている。呼吸状態の維持のしやすさについては約90%の職員が維持しやすいと回答し、改良ベルトの有用性が確認できた。改良固定ベルトへ変更後よりA 氏のETCO2 値や脈拍の変動が少なくなり呼吸状態も安定しやすくなった。一方で、更に改善してほしいという意見もあり、今後も改善を行っていく必要があることが分かった。【考察】長期間の気管カニューレ留置は、肉芽形成や気管腕頭動脈瘻などの致命的合併症のリスクが高まるとされ、日常的にカニューレ事故抜去のリスクも伴う。今回、永久気管切開孔に直接マスクを当てることでそれらのリスクは軽減したが、前例がないことから関連する合併症の発症に注意が必要である。そのため、継続的なデータを収集し、異常の早期発見と安定した呼吸管理を目指していくことが必要である。また、マスク固定用ベルトを改良することで装着しやすく、安定した呼吸管理ができるようになったが、ベルトをはじめマスクの劣化や更に固定方法の安定を望む意見もある。今後も改良を重ねることで適切に人工呼吸器管理が実施できるよう検討していく必要がある。人工呼吸器管理を必要とする重症心身障害者が増加していくと考えられる。マスクによる人工呼吸器管理方法が選択肢の1 つになる足懸りとなるように、データ収集と装着方法の改良を継続していくことが今後の課題である。