第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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ポスター

ポスター28群 患者の回復と生活の質の改善に向けた看護②

Wed. Nov 9, 2022 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場 (国際展示場)

座長:栂野 加寿枝

[ポスターM-28-2] 経管栄養を投与している脳疾患患者の舌苔の程度と経口摂取移行についての実態調査

井上 夏子, 友野 理玖, 橋口 美波, 吉田 智華, 前田 春香 (徳島赤十字病院)

Keywords:脳疾患患者、舌苔、摂食嚥下障害

【抄録】
【目的】脳疾患による摂食嚥下障害患者を早期に経口摂取移行へ繋げるため、経管栄養から経口摂取に移行した患者と移行できなかった患者の舌苔の程度について実態調査し、経口摂取可能かどうかの判断指標について検討した。【方法】A病院脳神経外科病棟に入院中の経管栄養投与患者32 名を対象に、舌苔付着状態記録用紙(TCR)を用いて舌苔の付着程度、舌苔の色、口腔乾燥、失語の有無について観察した。経口摂取移行群と非経口摂取群の舌苔付着状態の割合(TCI)をt 検定、口腔乾燥の有無をマン・ホイットニーのU 検定、失語の有無をχ2検定を用いて比較した。本研究はA 病院倫理審査委員会の承認を得た後、研究協力に対する自由意志の保証と個人情報の保護について説明、同意を得て実施した。意識障害のある対象者は代理人の同意を得ると共に、介入中対象者の反応を観察し、本人の意志を汲み取った。【結果】2群間のTCI の比較では、経口摂取移行群はTCI 50%以上が1 名(9%)、平均値15.0%、非経口摂取群はTCI 50%以上が5 名(23.8%)、平均値34.6%であり、p = 0.02 で有意差があった。両群TCI 50%を超える対象者は失語症を有していたが、2 群間の失語の有無は有意差はなかった。舌苔の色はピンク~乳白色で有意差はなかった。口腔乾燥は、経口摂取移行群は正常7 名(63.6%)、非経口摂取群17 名(81%)に軽度~重度の口腔乾燥が見られ、p = 0.02 で有意差があった。【考察】舌苔の付着程度は嚥下機能に関連があることが示され、経口摂取可能かどうかの判断指標にできる可能性が示唆された。しかし、TCI について具体的な数値を導くことはできなかったため、指標とするためには、対象疾患や対象者数を増やし、検討を重ねる必要があると考える。舌苔は、咀嚼・嚥下・発語による舌の運動が低下することで摩擦や唾液による舌背の汚れが洗い流されなくなり形成される。本研究では、口腔乾燥と嚥下機能の関連が示されたが、TCI と口腔乾燥の関連性は見られなかった。また、失語症患者はTCI が高い傾向にあった。これは、失語による会話の減少が舌の運動量を低下させ、舌苔の付着を招いたのではないかと考える。以上より、嚥下機能と舌苔の程度、口腔乾燥、失語の有無の関連が示され、これはケアの中で観察可能であり、早期に経口摂取移行へ繋げることを可能にすると考える。