第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演15群 穏やかに死を迎えることの支援

Tue. Nov 8, 2022 3:30 PM - 4:30 PM 口演会場5 (103)

座長:橋口 周子

[口演M-15-5] 入退院を繰り返す心不全患者への緩和ケア

盛小禰 凜子, 玉城 雄也, 田場 あやね, 大城 ちか子, 大田 美香, 平田 晃己, 宮城 あゆみ, 財間 智士, 佐久間 博明, 吉原 昌志 (琉球大学病院)

Keywords:心不全緩和ケア、多職種連携、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

【抄録】
【目的】心不全入院を繰り返し、揺れ動く意志の中で病院での看取りとなった症例への介入を振り返り、心不全緩和ケアの質の向上につなげることを目的とする。【方法】事例研究。倫理的配慮:対象者の個人情報保護に配慮した。【結果】対象:A 氏、60 代男性。心不全ステージD の重症かつ末期心不全にて入退院を繰り返していた。今回は急性心不全にてICUに緊急入院。前回入院時のアドバンス・ケア・プランニング(ACP)では、侵襲的な治療は望まないが、できる限りの内科的治療にて長生きしたい、できるだけ家族と過ごしたいという意思決定をされていた。そのため、緩和ケアを中心とした多職種で構成される心不全サポートチームの介入を行った。その後、本人と代理意思決定者である妻の意思を確認すると、ACP の内容に変化はなかった。そこで、本人・妻の希望に添えるように、ビデオメッセージの作成や、オンラインでの面会調整等を行なった。徐々に状態は改善し、一般病棟へ移動となった。毎日の血液透析と強心薬の持続静注は離脱できない状況であったが、本人は自宅退院の希望を表出していた。そのため、介護保険申請の準備や透析通院先の調整を行った。しかし再度状態が悪化したため、定期的に全人的苦痛(IPOS)を評価した。食欲不振、下痢の症状に対して栄養サポートチームとの協働、透析による強い掻痒感に対する薬剤師との協働、呼吸困難感等の症状増悪に対し、緩和ケアチーム介入と多職種と協働して症状緩和に努めた。できる限りの苦痛を緩和し、家族に見守られながら最期を迎えた。【考察】重症心不全患者では実際の予後よりも自分の余命を過大評価する傾向にあると報告されており、早期からACPの意思決定支援を行い、本人・家族の意思を尊重した治療・ケアを行うことが重要である。本症例では、前回の入院時からACP を確認できていたことで、本人・家族の希望を尊重し、最善と考えられる緩和ケアの提供につながった。また増悪と寛解を繰り返し、予後予測が困難であるという心不全の特徴を踏まえた上で、悪くなった時と良くなった時の両方の状態に備えて準備をしていたことは、患者・家族のニーズにタイムリーに応えることができた要因となった。今後も心不全サポートチームとしてACP 等の意思決定支援を強化していく必要がある。