第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演19群 看護職の業務に対する困難感①

2022年11月8日(火) 11:30 〜 12:30 口演会場7 (105)

座長:梅内 美保子

[口演M-19-1] ホスピス病棟における看護師の退院支援への困難感とその対策

-ホスピス行程表の運用を通して-

近藤 美希, 今城 美智代, 横山 美由紀, 柴田 真由美, 杉浦 あかね, 小嶋 紀子 (聖霊病院)

キーワード:退院支援への困難感、患者や家族に不利益、ホスピス行程表

【抄録】
【目的】A 病院のホスピスに勤務する看護師は、ホスピスからの退院を“ 患者や家族に不利益なことを強いる” と、患者や家族、医療者間でのコミュニケーションの難しさを感じていた。さらに、臨終を見据えた退院支援の経験不足が重なり、退院支援への困難感を強めていた。これらの対策として、患者や家族の望む過ごし方を念頭に医療者用の“ ホスピス行程表” を作成・運用し、ホスピス病棟における看護師の退院支援への困難感が変化したかを評価した。【方法】A 病院のホスピス病棟に勤務する退院支援に関わったことがある臨床経験5 年以上の看護師を参加者とし、デルファイ法で評価した。最終的な参加者は21 名だった。“ 退院支援への困難感” の調査から得た内容を質問紙の10 個の質問へ抽出し、1.あてはまる2.ややあてはまる3.どちらでもない4.ややあてはまらない5.あてはまらない の5 段階での回答とした。質問紙に自由記載欄を設けた。ホスピス行程表の導入直後を初回、以後6 か月毎に3 ラウンドの調査をした。質問に対し4と5 の回答が80%を超えたときを退院支援への困難感が軽減したことの合意とした。【結果】有効回答率は57 ~ 71%で、合意は3 回目「カンファレンスで何を話していいかわからない」、4 回目「患者様の看取りの時期を意識して関わることが難しい」のそれぞれ1 項目で得られた。質問内容の「ホスピスの退院支援でジレンマを感じる」「ホスピスに入院した方はホスピスで看取るべきだ」の合意率は常に低かった。自由記載欄より「ホスピスからの退院も望みを支える支援になるとわかった」「意見交換がしやすくなった」「行程表に沿うことは結局医療者主体」といった意見や、コロナ禍で家族に関わる機会が減ったことによる退院支援への困難感という新たな課題がわかった。【考察】本報告は人事異動で予定より有効回答率が低くなったが、ホスピス行程表の運用はホスピス病棟に勤務する看護師の退院支援への困難感を軽減する一助となった。ホスピスからの退院を“ 患者や家族に不利益なことを強いる” のではなく“ 患者の望みを見直すきっかけ”とし、コミュニケーションが活発になった。合意率の低い回答より、一定数の看護師が葛藤を抱えながらもホスピスでの看取りに意味を感じているとわかった。今後は新たな課題に対し“ 患者用ホスピス行程表” を運用して、より患者や家族を主体に関わりたい。