第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演21群 看護技術の向上

2022年11月8日(火) 15:30 〜 16:30 口演会場7 (105)

座長:飛世 真理子

[口演M-21-4] 看護師が実施する意識障害がある患者へのクーリングに関する実体調査

荒木 愛, 水沼 由美子, 渡邉 理奈 (獨協医科大学病院)

キーワード:クーリング、意識障害、発熱

【抄録】
【目的】看護師が意識障害のある患者にクーリングを行うときに、どのような知識と判断を行っているのかを明らかにし、新人研修の基礎資料とする。【方法】意識障害の患者が多く入院する病棟の2 年目以上の看護師132 名に、クーリングについて自己式質問紙調査を実施した。対象者には、質問紙は無記名であり、個人が特定されないよう配慮すること、研究内容、拒否しても業務上不利益がないことを説明し、各病棟に設置した回収袋への質問紙の投函をもって同意とした。調査結果はExcel2020 を使用し、単純集計で分析した。研究デザインは量的記述研究である。【結果】有効回答数103 名(有効回答率88.8%)。各回答の中央値は、クーリングを開始する体温37.9℃(37.0 ~ 38.5℃)、終了する体温37.0℃(36.0 ~38.0℃)、効果を確認するまでの時間75 分(30 ~ 240 分)であった。意識障害がある患者の、感染症による発熱にクーリングを「実施する」は92.2%、術後の発熱に「実施する」は80.6%であった。セットポイントを「知っている」は63.1%であり、そのうち「セットポイントを意識したことがある」は83.0%であった。「発熱の生体反応を意識したことがある」は76.7%であった。看護ケアの中でのクーリングを重要だと思う理由は「臨床経験から」「看護師になってからの教育」が多かった。【考察】意識障害がある患者にクーリングを実施、終了する体温、効果を確認するまでの時間において看護師間で差が生じているため、体温管理の基準を作成し、安全な看護を提供する必要がある。また、感染症や術後の発熱はセットポイントを低下させる薬物療法が効果的であると言われているが、クーリングを実施する割合が高かったことからも誤った知識から判断していることが考えられる。意識障害があり、コミュニケーションが困難である患者の「心地よさ」の効果を評価することは困難であるため、クーリングによるシバリングや自然治癒力の低下等の弊害効果を生む危険性が高くなる。そのため、意識障害がある患者へのクーリングの実施は慎重に考慮するべきであると考える。クーリングは以前から習慣的な看護行為として実施されてきたと考えられ、十分な教育が行われていない可能性がある。発熱やクーリングによる生体反応を明確化し、基礎看護教育を確立させていくことが重要であると考える。