第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演27群 意思決定支援

2022年11月9日(水) 14:00 〜 15:00 口演会場2 (303)

座長:橋口 周子

[口演M-27-2] 終末期がん患者の意思決定に関わる一般病棟看護師のジレンマ

-ギアチェンジ期に焦点を当てて-

遠藤 美里, 鴨志田 妃奈子 (水戸赤十字病院)

キーワード:終末期がん患者、意思決定、ギアチェンジ、一般病棟、ジレンマ

【抄録】
【目的】終末期がん患者のギアチェンジ期における意思決定に関わる一般病棟看護師のジレンマを明らかにする【方法】研究者が独自に作成したインタビューガイドをもとにA 病棟看護師13 名(リーダー業務経験者9 名、未経験者5 名)に半構成的面接を実施した。面接データから逐語録を作成し、コード化、カテゴリー化した。【結果】129 コード、19サブカテゴリーから、1.[時間的余裕がなく理想とする看護が行えない]、2.[病状説明が不足していることで患者の選択権がない]、3.[適切な時期にギアチェンジが出来ていない]、4.[患者の意思が尊重されないまま治療がされている]、5.[終末期看護の経験不足により意思決定を促すことが出来ない]、6.[医師と看護師の認識のずれ]、7.[コロナ禍の面会制限による家族とのコミュニケーション不足]の7 カテゴリーに分類された。リーダー業務経験の有無により、分類された5.6.7の3 カテゴリーよりジレンマに差がみられた。【考察】急性期と終末期の患者が混在する一般病棟では、急性期患者が優先されてしまうことで、終末期がん患者と関わる時間が少なく、自らが理想とする看護が実施できていないことにより[時間的余裕がなく理想とする看護が行えない]ジレンマを生じていた。病状説明時に看護師の同席が難しく、患者の反応や理解度に合わせたタイムリーな介入ができないことで[病状説明が不足していることで患者の選択権がない]ジレンマとなっていた。患者・家族が病状や予後を十分に理解できていないことはギアチェンジするタイミングを逃してしまう要因となり[適切な時期にギアチェンジが出来ていない]ジレンマを生じていた。これらは、時間的・心理的に余裕がない中で終末期がん患者のギアチェンジに関わる上で生じたジレンマであり、互いに関連し合っていた。またジレンマは、リーダー業務経験の有無により差がみられた。リーダーが医師や家族の間を調整する役割があるため、意思決定支援をする上で深く関わっていることが関係していると考える。一方、リーダー業務未経験者は、医師や家族に思いを伝え患者の意思決定に反映させるといった視点が少ないため、ジレンマに至らなかったと推察される。今後は、メンタルサポートに加えて、教育的支援や医師と看護師が情報共有できるような環境づくりが課題となる。