第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演27群 意思決定支援

Wed. Nov 9, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場2 (303)

座長:橋口 周子

[口演M-27-3] 筋萎縮性側索硬化症患者の人工呼吸器装着に対する意思決定に影響を及ぼす医師の要因

古屋 玲子 (東京都立神経病院)

Keywords:ALS、人工呼吸器、意思決定支援、医師の要因

【抄録】
【目的】呼吸器装着の意思決定に影響するといわれている医師の思い、説明の時期、方法、態度について明らかにし、患者・家族・医療者の合意形成のもと意思決定がなされるような看護援助の為の示唆を得る。【方法】半構造化面接を実施。データを基に逐語録を作成しコード化・カテゴリー化した。【結果】参加は医師18 名(男性13 名、女性5 名)、年代は30 代8 名、40 代5 名、60 代4 名、20 代1 名であった。医師経験年数は5 ~ 41 年、神経内科経験年数は2 ~ 38 年、意思決定を行った人数は3 ~ 100 人以上だった。語りの分析は呼吸器装着への思いは147 のコード、23 のサブカテゴリー、<その人の考えによる正解のない選択である><何の為に呼吸器装着を選択し選択後どう生きるかが重要>等の8 つのカテゴリーにまとめられた。説明方法は226 のコード、34 のサブカテゴリー、<相手の理解や身体状況に合わせる><どのように意思決定していけばよいのかを説明する>等の11 のカテゴリーにまとめられた。説明にあたっての態度・姿勢は115 のコード、16 のサブカテゴリー、<真剣かつ思いやりをもって><ニュートラルな立場で>等の10 のカテゴリーにまとめられた。説明時期と対応は111 のコード、22 のサブカテゴリー、<最初に話す><継続的に説明する>等の6 つのカテゴリーにまとめられた。【考察】呼吸器装着への思いはそれぞれであった。装着して欲しいと思う医師は“ 生きる為の選択” と捉え、装着しない方が良いと思う医師は「呼吸器導入後も運動障害は進行し、重度コミュニケーション障害になる」事や「医療的処置が必要になったり介護量が増えたりして生活機能上の負荷が加わる」事を経験し、装着後の厳しい未来を考えての事であった。ただし、装着を肯定する医師も<患者・家族の背景によっては装着しない方がよいと思う場合がある>と考え<その人の考えによる正解のない選択>と認識していた。「意思決定に医師の死生観や告知の仕方が影響する」と言われているが、本研究では全員が中立の立場をとっており、個人の思いが意思決定に及ぼす影響は少ないと考える。医師が「説明は精神的につらいもの」であると語っており、看護師はその思いをくんでサポートする必要がある。「情報提供に対し患者や家族は不満を抱いて」いたり「求めている情報とのずれから医師への不信感が高まる」事も指摘されており、説明方法が患者に適しているかを客観的に判断する必要がある。