第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演31群 在宅療養移行支援④

2022年11月9日(水) 14:00 〜 15:00 口演会場3 (304)

座長:吉村 浩美

[口演M-31-3] 児童思春期精神科病棟における熟練看護師の子どもに対する退院支援プロセスについて(第1 報)

渡邉 聖子, 関 佳子 (神奈川県立こども医療センター)

キーワード:児童思春期精神科看護、熟練看護師、子ども、退院支援プロセス

【抄録】
【目的】児童思春期精神科病棟における熟練看護師の子どもに対する退院支援プロセスを明らかにする。【方法】本研究は、ベナーの看護論をもとに臨床経験10 年以上(そのうち児童思春期精神科病棟5 年以上)の看護師を熟練看護師と定義した。所属施設の倫理委員会の承認後、対象者に研究の主旨および内容を口頭と紙面で説明し、同意を得られた熟練看護師6 名を対象に半構成的面接を行った。調査期間は2019 年11月1 日~ 2020 年1 月31 日。研究対象者の同意のもと、インタビュー内容をIC レコーダーで録音し、得られたデータを逐語録に起こして分析した。本研究は、データに密着した現象を詳細に記述することが可能なグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に質的帰納的に分析した。データ分析はグラウンデッド・セオリー・アプローチの研究に精通しているスタッフに指導を受け、分析の信頼性と妥当性に努めた。【結果】対象者の臨床経験年数の平均は18 年3 カ月(± 8 年4 ヵ月)、児童思春期精神科病棟での通算勤務年数は平均7 年9カ月(± 1 年6 ヵ月)であった。熟練看護師が実践する子どもの退院支援プロセスは、《退院後の生活を予測した支援計画の立案》、《子どもとの関係構築》、《子どもへの支援方法の試行錯誤》、《看護スタッフ間での対応の統一化》、《子どもの主体性を引き出す支援》、《支援の手ごたえ》の6 つのカテゴリーで構成され、それぞれのカテゴリーには具体的な看護として18 のサブカテゴリーが抽出された。【考察】熟練看護師は退院日が決定してからその後の生活を予測した支援計画を立案するのではなく、早い段階から子どもの課題とは何か、その課題はどのようなことが絡み複雑化しているのかなど経験知から想像力をフルに活用し、子どもの問題背景に隠れているものをアセスメントしていた。子どもとかかわる際には子どもの病状に巻き込まれる可能性や、自分の行動が子どもに与える影響を予測しながら適度な心理的距離感を意識したかかわり方をとっていた。子どもの中には失敗体験の積み重ねから傷つき、課題と向き合うことを諦めてしまうことも多い。熟練看護師は子どもが生活スキルを身につけるだけでなく、自己肯定感の回復を目指すことも子どもの自立と成長過程に必要なものだと考えるからこそ、《子どもの主体性を引き出す支援》を核とした退院支援プロセスを踏んでいた。