第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演36群 母子の入退院支援・地域連携

Wed. Nov 9, 2022 3:30 PM - 4:30 PM 口演会場4 (102)

座長:木下 千鶴

[口演M-36-4] 周産期メンタルヘルス支援を行った妊産褥婦の背景と支援の実態

相澤 加奈, 吉澤 恵, 白坂 知彦, 常田 深雪, 内田 智美 (手稲渓仁会病院)

Keywords:周産期、メンタルヘルス、支援体制、リエゾン精神看護

【抄録】
【目的】国内における妊産婦の自殺率や児童虐待の状況から、地域とも連携した周産期のメンタルヘルス支援が求められている。A 病院は精神科無床で地域周産期母子医療センターの役割を担いながら周産期メンタルヘルス支援を行っている。本研究の目的は医療チームと地域が協働して介入した精神的な問題を抱えた妊産褥婦の背景と支援の実態を明らかにし、今後の支援の示唆を得ることである。【方法】2018 年1 月~2021 年12 月の期間に多職種で支援を行った妊産褥婦の診療録から、妊産褥婦の基本属性(年齢、既往歴、向精神薬継続の有無)と育児支援者の有無、看護介入した内容、地域・他機関との連携内容、介入後の転帰を後方視的に診療録から抽出し分析した。なお本研究はA 病院の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】支援した妊産褥婦は159 名で、平均年齢30.2 歳であった。精神疾患・精神発達遅滞既往114 名(72%)、向精神薬継続あり52 名(33%)、育児支援者なし4名(3%)であった。看護介入は妊娠期に助産師がスクリーニングを実施し、リエゾンナースが定期的な看護面談と精神状態の査定、精神症状に対する心理教育を44 名(28%)に行っていた。また、精神科受診の調整9 名(6%)、向精神薬内服中の母乳育児の意思決定支援8 名(5%)は協働して行っていた。入院管理中に精神科リエゾンチームの介入に至ったケースは4 名(3%)、精神科有床の他施設に転院となったケースは8 名(5%)であった。児童虐待を防ぐため妊娠期から地域合同カンファレンスや要保護児童対策協議会を開催したケースは10 名(6%)、産後も精神状態のフォローを地域保健師に依頼したケースは90 名(57%)であった。A 病院で出産に至った妊婦は147 名(93%)で、このうち産後1ヶ月健診の受診率は100%、出産後に児童相談所が介入し児童保護となったケースは5 名(3%)であった。【考察】妊娠期からスクリーニングを実施し、専門家が精神状態の変化を予測しながら介入する過程で、症状コントロールや育児不安を相談できる相手として支援者との関係が深まり、産後1ヶ月健診を全員が受診した結果になったと考える。一方で児童保護となったケースが5名いたことを考えると、ハイリスクケースを早い段階から地域カンファレンス等で情報を共有し、妊娠期から機を逃さず行政等の関連機関に繋いでいく必要がある。