第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

講演情報

口演

口演42群 安全・安楽への支援

2022年11月9日(水) 12:40 〜 13:40 口演会場6 (104)

座長:殿谷 淳子

[口演M-42-3] 外科病棟看護師が認識する術後せん妄発症リスク要因とその関わり

田端 美里1, 井川 由貴2, 一宮 はるか1, 中山 稚菜1 (1.山梨県立中央病院, 2.山梨県立大学看護学部)

キーワード:外科病棟、術後せん妄、看護師、リスク要因

【抄録】
【目的】外科病棟看護師(以下、看護師)の術後せん妄患者への関わりと術後せん妄要因の認識を明らかにする.【方法】看護師29 名に「(1)せん妄患者への関わり(意識している事、困難感、せん妄発症の予測)」と「(2)せん妄要因(患者背景、促進因子、生活要因、環境要因、外科病棟の特徴とICU 等からの継続情報)を認識している程度(60 項目、4 段階評価)」について自記式質問紙にて調査した.(1)は自由記述で得たデータを類似性に基づき内容分析を行い、(2)は平均値の上・下位項目を算出した. 本研究は研究者所属施設の研究倫理審査委員会の承認を受け実施した.【結果】回収数25(回収率86%). 平均看護経験年数5.7 年. 全員がせん妄患者の受け持ち経験があり、不安や困難感を感じた経験があり、関わる際に意識していることがあると回答した. 看護師が<意識している事> は、落ち着いて穏やかに関わる(13)、昼夜のリズムを整える(11)、患者の思いを尊重する(10)、アセスメントして関わる(8)、複数人で対応する(3)等の6 カテゴリー(55)、<困難感>は、療養上の治療・ケア実践における困難感(28)、患者の安全と意思決定を妨げる可能性への困惑(26)、せん妄に関する判断における困難感(14)、せん妄患者に関わる上での不安(9)の4 カテゴリー(77)、<せん妄発症の予測>は、患者の行動や反応(53)、既往(49)、術後の身体侵襲(24)、性格や特性(15)、環境変化(4)等の6 カテゴリー(146)であった(( )内はコード数)). また看護師が上位に認識している「せん妄要因」の項目(3.7 以下)は、年齢、認知障害・せん妄・脳血管障害の既往、睡眠障害、挿入物への緊張や不安、外科病棟での抑制等であり、下位の項目(3.3 以下)は、性別、 職業、腎機能、排便トラブルや絶飲食、個室や他患との関わり等であった.【考察】看護師は、術後身体損傷に直結する項目を上位に認識する一方、社会・生活背景への着目は比較的下位であった. せん妄患者への実践例には、カレンダーや家族写真の設置、昼夜のリズムを整える、多職種介入等があるが、せん妄患者への介入は事故にもつながりやすく、苦手意識から予兆を見逃すこともある. 今後は看護師の認知エラーにも着目した学習会やスクリーニングツールの活用等の対応につなげていくという示唆を得た.