第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演42群 安全・安楽への支援

Wed. Nov 9, 2022 12:40 PM - 1:40 PM 口演会場6 (104)

座長:殿谷 淳子

[口演M-42-4] 暴力行為により隔離が行われている患者に対して行動制限最小化に向けた判断を行う場合の精神科熟練看護師の観察視点

中島 甫, 中村 和人, 山口 達也 (福井県立病院)

Keywords:暴力、隔離、行動制限最小化、精神科、熟練看護師

【抄録】
【目的】暴力行為により隔離が必要となった暴力リスクの高い患者に対して、精神科看護経験が5 年以上の熟練看護師が行動制限最小化のために用いる観察視点を明らかにすることで、行動制限最小化に効果的につなげる取り組みへの示唆を得ること。【方法】精神科療養病棟に勤務する精神科熟練看護師を対象に、インタビューガイドを用いて半構成的面接を実施した。得られたデータから逐語録を作成し、データの類似性に注目しながら段階的にカテゴリー化した。【結果】5名の精神科熟練看護師から得られた観察視点として、《暴力リスクの有無》、《コーピング能力》、《精神症状の影響》、《隔離が必要になった要件》、《患者の暴力行為に対する解釈》、《行動拡大時の患者の反応や状態》、《患者の希望やケアニーズ》、《隔離環境下での患者の状態》、《医療者に対する陰性感情の有無》、《患者の困りごと》、《対象者に対する共感性の有無》、《暴力のトリガー》といった〈患者側の要因〉、《共感ポイントの有無》、《五感を通して観察されるすべての患者の情報》、《患者の行動に対する見通し》、《看護師側の陰性感情の有無》といった〈看護師側の要因〉、《患者- 看護師関係》といった〈患者- 看護師関係要因〉、《チームの方針》、《隔離の必要性についての説明内容》、《被害者の受け止め方》といった〈臨床状況要因〉の4 つのカテゴリーが抽出された。【考察】熟練看護師は〈患者側の要因〉として《暴力リスクの有無》などを観察する一方で、同時に《共感ポイントの有無》を探ろうとする視点も取り入れていた。リスクばかり強調されることが行動制限最小化の判断の障壁とならないよう、熟練看護師はケアの可能性を拡大する意味でも、意図的に共感ポイントを観察視点に取り入れているものと考える。また、行動制限の判断を行う際に、〈看護師側の要因〉として《看護師側の陰性感情の有無》という観察視点も抽出された。患者からの暴力被害に遭った場合に看護師が患者に対して抱くネガティブな感情が倫理的判断を鈍らせる可能性をも考慮し、看護師自身の内面の動きにも着目しながら観察することが重要だと考える。さらに患者側、看護師側の要因に止まらず、〈患者-看護師関係要因〉や〈臨床状況要因〉も含めた、より包括的な視点で患者を観察することにより、行動制限最小化に向けた効果的なアセスメントに繋がる可能性があると考える。