第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 幕張

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口演

口演8群 患者の回復と生活の質の改善に向けた看護②

Tue. Nov 8, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場3 (304)

座長:伊藤 恵美

[口演M-8-2] 外来化学療法中に就労を継続しているがん患者のストレスとコーピングに関する研究

塚 久美子 (高槻病院)

Keywords:がん、就労、外来化学療法

【抄録】
【目的】外来化学療法中のがん患者が抱くストレスとそのコーピングの就労の有無による違いを明らかにすることである。【方法】外来化学療法を行っているがん患者93 名に質問紙調査を行った。調査項目は対象者の属性、治療の状況、就労状況、化学療法を受けているがん患者の気がかり評定尺度(以下CCRS とする)、がんに対する心理適応評価尺度日本版(以下MAC 尺度とする)である。分析方法は就労中、休職中、未就労の3 群間で、属性・治療の状況においてχ2検定を行った。CCRS とMAC 尺度および下位尺度は一元配置分散分析を行い、その後の検定にTukey HSD の多重比較を用いた。【結果】有効回答が得られた79 名の分析の結果、対象者の平均年齢は62 ± 10.90 歳で、就労をしているものは、休職中も含めて38%で未就労は62%であった。就労している対象者のうち60 歳以上で就労している割合は59.1%、休職中の割合は37.5%であった。働く理由としては「社会の一員としての勤めを果たす」が80%、「経済的な問題」と回答したものが70%であった。就労中、休職中、未就労の3 群間でのχ2検定を行った結果、属性・治療の状況には有意な差を認めなかった。また、CCRS の下位尺度である「社会・経済の見通し」に3 群間での有意差を認め、その後の検定(Tukey HSD)で休職中9.00 ± 1.51 と未就労6.41 ± 2.16 において有意差を認めた。MAC 尺度では、3 群間に有意な差を認めなかった。【考察】本研究の対象者は定年間際、定年後も化学療法を受けながら就労を継続していた。化学療法を受け、就労を継続する患者の休職中のものは未就労のものより、「社会・経済の見通し」にストレスを感じていた。休職中のものは、治療に専念するために一時的に就労を中断しており今後、治療と就労を両立させて経済的な安定が得られるのか懸念を抱いていることが示唆された。そのため、化学療法を受けて就労の継続を希望する休職中のものには、就労継続に対する思いを把握し、治療と就労が継続できるように支援していくことが重要である。また、本研究では治療によるストレスの心理的な適応に対して、就労別による違いがあると仮説を立てたが、本研究の対象者では違いを認めなかった。さらに化学療法を受け就労を継続する高齢者も多く、就労を継続する高齢患者への支援も必要であることが示唆された。