第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

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口演

口演10群 ポストコロナ社会の看護への示唆③

Fri. Sep 29, 2023 10:15 AM - 11:15 AM 口演会場4 第9会場 (1202)

座長:深尾 亜由美

[口演O-10-3] 新型コロナウイルス感染および濃厚接触者となった母親とその子どもの母児同室への取り組み

久保 理江子, 井本 清美 (大阪母子医療センター)

Keywords:新型コロナウイルス、感染、母児同室

【目的】新型コロナウイルスの感染により、子どもに接しないまま退院を迎え、家庭ではじめて子どもと接し、育児を開始する母親が増加した。しかし、生後早期の母子の相互作用を高めることは、後の母乳育児や愛着形成にとても重要である。今回、育児環境を調整し、安全かつ安心して母児同室を行えるように取り組んだので報告する。【方法】産科・新生児科医師・院内感染対策チームで協議し、母児同室のチェックリストやマニュアルを作成した。2022 年2 月より対象者20 例に対し、新生児科医師が母児同室について十分に説明し、同意が得られた場合に行った。母児同室の期間は退院前日からの1泊2日とした。スタッフへの感染防止の観点から、母児同室中は院内電話でサポートを行い、必要に応じて訪室した。課題を見出すために、母児の1か月検診時に、外来スタッフから個人情報の保護と途中で中断が可能であることを口頭で説明し、同意を得たうえで、病棟スタッフが当時の気持ちや改善点について個室で聴き取りをした。【結果】母児の身体的要因により実施できなかったのは4 例、感染が怖いという理由で同意が得られなかったのは1 例であった。15 例が母児同室を行い、母児同時退院を目指した。このうち、5例は母児同室開始日が隔離期間の終了日となっていた。母児同室を行った子ども、対応したスタッフに新型コロナウイルス感染は認めず、安全に母児同室を行うことができた。隔離期間中に、母児同室を行った10 名のうち、1か月健診時に説明ができ、聞き取りが可能であったのは30 歳代の経産婦と40 歳代の初産婦の2 名であった。「できないと思っていた母児同室ができた」、「子どもの特徴を知ったうえで育児を行えた」、「自身の体調が回復した時期に育児を開始できて良かった」との意見があった。しかし、乳房ケアへの不安や、退院後の感染対策についての理解が不充分であったことが明らかになった。そのため、乳房ケアのサポートや、家庭における継続した感染対策が徹底できるような説明の方法を考えることが課題となった。【考察】新型コロナウイルス感染の母親と子どもの母児同室は、一定の条件を満たせば安全に実施することができる。どのような状況においても、親と子の絆を阻害しないように、母児同室期間の延長やより充実した退院支援を行っていく必要がある。