第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

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口演

口演5群 看護職の心の働きとその対処②

Fri. Sep 29, 2023 1:15 PM - 2:15 PM 口演会場2 第7会場 (1004+1005)

座長:塩田 美佐代

[口演O-5-2] 新型コロナウイルス感染症病棟で自殺企図を起こした患者に関わった病棟看護師の行動分析

―ラザルスのストレス理論を用いて―

藤井 政則, 大本 真紀子, 高田 恵子, 上田 美恵子, 新本 明美, 吉田 雅代 (大阪市立十三市民病院)

Keywords:新型コロナウイルス感染症病棟、自殺企図、ラザルス理論、ストレスコーピング

【目的】自殺企図を起こした患者に関わった病棟看護師の行動と関連する要因を分析し、看護師の対処行動およびその経過を明らかにする。【方法】(1)研究対象:X 病院新型コロナウイルス感染症病棟で入院中に自殺企図を起こした患者に関わった看護師15 名(2)調査方法:自殺企図に直面した後の変化についてアンケート用紙を用いて調査する。倫理的配慮として、所属施設の倫理委員会で承認を得た。対象者に研究の主旨、目的、辞退を理由とした不利益はないこと、プライバシー、匿名性の保障を説明し同意を得た。(3)研究期間:2022 年5 月12 日~ 2022 年10 月30 日(4)分析方法:記載された自殺企図に直面した後の行動を抽出しラザルスのストレスコーピングを用いて分析を行う。【結果】看護師の行動をラザルスのストレスコーピングで分類すると、直面している課題そのものをなくそうとする問題焦点型に分類された看護師が9 名で、対処行動として「環境を調整する」が6 名と1 番多く、他は「自己学習する」、「マニュアルを見る」であった。対話による精神的アプローチでストレスを緩和しようとする情動焦点型に分類された看護師は6 名で、対処行動は「気持ちを打ち明ける」が3 名、他は「気持ちを共有する」、「相談する」であった。行動の要因として問題焦点型の傾向を示す看護師は、比較的冷静に患者のおかれていた状況を振り返っていた。情動焦点型の傾向を示す看護師は、何かできなかったのかと振り返り、後悔や責任を感じるといった情緒的な内容を述べていた。問題焦点型には、経験年数が長い看護師に多くみられた。【考察】自殺企図という出来事に対する意味づけや「患者をどのように受け止めたか」「患者との関わり」等の要因が対処行動に関連しており、看護師が自殺企図をどのように認識したかによって、行動が選択されていくという傾向があった。対処行動は大きく2 つに分けられたが、過去の経験や環境によって単一ではなく複数の行動を選択し取り入れることも認められた。また、看護師の半数は心理的衝撃から回避する対処を更に取り入れ、看護師自身が対応することも示唆された。問題焦点型に分類された看護師に経験年数が長い傾向が認められたのは、看護ケアの経験値が高くその実践能力により、自殺企図に直面した場合でも対象への働きかけと周囲の状況を理解し、問題解決を図ることができるためと推測された。