第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

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口演

口演5群 看護職の心の働きとその対処②

Fri. Sep 29, 2023 1:15 PM - 2:15 PM 口演会場2 第7会場 (1004+1005)

座長:塩田 美佐代

[口演O-5-3] 一般病棟における終末期呼吸器疾患患者への緩和ケア

―肯定的感情につながった体験に焦点をあてて―

近藤 百香 (福井県立病院)

Keywords:終末期、呼吸器疾患、緩和ケア、肯定的感情、デスカンファレンス

【目的】終末期呼吸器疾患患者に関わる看護師の肯定的感情につながった緩和ケアについて明らかにし、今後の充実した緩和ケア提供の示唆を得る。【方法】対象者はA 病棟における経験年数が3 年以上かつ研究協力に同意が得られた看護師7名。インタビューガイドを用いた半構成的面接を1 人1 回20分程度行い、逐語録を作成した。インタビューで語られている言葉の意味内容を損ねないようにデータを抽出し、類似したデータを集めてサブカテゴリー、カテゴリーへと抽出度を上げた。本研究は院内倫理委員会の承認を得て実施した。対象者には研究の趣旨、個人情報の保護、不参加・中断の場合でも不利益が生じないことを文書と口頭にて説明し同意を得た。【結果】女性看護師7名からデータを集めた。分析の結果、《患者の苦痛が緩和される》《患者の意思を尊重できる》《治療期からの関わりを活かし、患者と良好な関係が築ける》《充実した家族ケアが実践できる》《デスカンファレンスを行い、ケアについて振り返る》の5 カテゴリーが抽出された。【考察】終末期呼吸器疾患患者は様々な苦痛症状が出現するため患者の状態を的確にアセスメントし、必要なケアを判断することが求められる。そのため、専門職としての役割をより強く認識しながら、アセスメントとケアを実践し、患者の苦痛が緩和されることで役割を果たせたと感じ、肯定的感情につなげていた。また患者の意思を尊重することや治療期からの信頼関係を活かした関わりができることでやりがいを感じていた。看護師は早い段階から患者との信頼関係を構築し、終末期を見据えた関わりを意識するとともに、患者の意思を尊重し、その人らしい穏やかな終末期を過ごせるように支援していくことが重要と考える。さらに家族を患者同様に緩和ケアの対象と位置づけ、充実した家族ケアが実践できることで肯定的感情を抱いていた。家族それぞれの状況や心理状態を理解し、家族が看取りに対して満足感をもてるように支援していくことが必要と考える。多くの看護師は終末期患者との関わりのなかで困難さや戸惑いを感じる。しかしデスカンファレンスを行い、ケアについて振り返るなかでネガティブな感情に折り合いをつけ、次の看護実践への原動力としていた。したがって、デスカンファレンスを通して、様々な苦悩を抱えながらも患者との関わりに価値を見出し、今後の緩和ケア実践に活かしていくことが重要と考える。