第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

講演情報

口演

口演6群 看護の質向上のための取組み

2023年9月29日(金) 15:00 〜 16:00 口演会場2 第7会場 (1004+1005)

座長:大江 理英

[口演O-6-1] 中小病院での自由意思に基づく看護研究への取り組みと研究支援体制

―12 年間の実態調査から―

岡山 美佐子1, 中山 栄純2 (1.立羽咋病院, 2.北里大学看護学部看護学科)

キーワード:看護研究、研究支援、実態調査

【目的】A 病院では、ノルマ制の看護研究を廃止し、平成20年より外部講師による研究支援体制(以後「支援塾」)を構築した。看護研究の取り組みは自由意思となったが、A 病院での看護研究は主体的に継続しており、今回、この支援塾の効果について明らかにする。【方法】1.研究期間:令和4 年4 月1 日~ 10 月31 日 2.対象:平成20 年4 月1 日~令和2年3 月31 日までの間に支援塾へ参加した看護師延べ143 名(実数73 名)3.方法:過去の支援記録の調査と院内在籍中の支援塾参加経験者46 名を対象にアンケート調査 4.倫理的配慮:アンケート調査への回答は任意とし、実施施設の倫理審査委員会の承認を得た。【結果】調査期間での参加者数は年平均12 名(8 組)、研究発表は年平均6 件で継続していた。研究成果の公表先は学会が50 件(62.5%)であった。支援塾の参加者は、全体の55%が主任以上であった。支援塾の活動が研究支援や継続意志につながったこととして、「講師からの直接アドバイス」81.5%が最も多く、次に「進行状況に応じたアドバイス」50.0%であった。支援塾参加のリピート率は48.9%であり、その理由として「研究支援が受けられる」77.7%が最も多く、次に「自己研鑽」55.5%であった。【考察】臨床看護研究の取り組みについて坂下らは、病床数100 ~ 200 床未満の病院で80.7%が実施、研究成果の公表先として学会が0.9%であったと述べている。病床数174 床のA 病院が、強制がない中で、ほぼ同等の学会発表率を維持していること、毎年看護研究に取り組んでおり実施率100% であることは、支援塾の効果の表れだと考える。宇多は、看護研究の実施を妨げる要因として、時間的問題、研究プロセスの知識・技術不足、研究を実施する支援体制や環境が整っていない点をあげている。支援塾は、年6 回定期的に開催し、当初から継続した外部講師および教育担当者によるサポート体制が充実している。参加は勤務時間に確保でき、個人の希望で予約可能である。看護研究の実施者を経験年数によって選定しスタッフ教育の目的とする病院が少なくない中、本人の希望によって無理なく看護研究に入り込める体制をとっていることが、自由意思で看護研究を継続できる要因と考える。更に、支援塾参加者の約半数がリピートしていることもこれらの効果の裏付けだと考える。