第54回(2023年度)日本看護学会学術集会 大阪

Presentation information

ポスター

ポスター3 群 ポストコロナ社会の看護への示唆

Fri. Sep 29, 2023 3:00 PM - 4:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

座長:大迫 しのぶ

[ポスターO-3-5] COVID-19 による個室隔離の環境にある患者の看護

―ペプロウの理論を用いた関係構築の振り返り―

池田 英恵, 野口 信子, 栗原 美知子 (北里大学北里研究所病院)

Keywords:COVID-19、個室隔離、ペプロウ、関係構築

【目的】COVID-19 患者は、個室隔離およびFullPPE 装着の医療者が出入りする部屋といった特殊な環境に置かれる。今回、COVID-19 で重症化リスク要因があり、内科的治療が必要で入院となった高齢者と看護師との関係構築に着目して振り返り、環境との関連性も明らかにすることを目的とした。【方法】患者の入院から退院までの経過、看護介入を看護記録からデータ収集し、ペプロウの理論に沿ってまとめ、考察した。倫理的配慮として対象の個人が特定されないように匿名性を高めた。【結果】方向付けの段階では、患者にとって、FullPPE 装着の看護師や外の状況がわからないという特殊な状況でも、看護師による自己紹介、患者を名前で呼ぶこと、また距離を大切にした関わりにより、一緒に歩み出す存在として患者に認識されることとなった。同一化の段階では、個室で対面する回数が増えるにつれて、患者の生きてきた背景や家族関係など、話される内容が深まっていった。看護師は、患者に合わせたトイレ介助方法など日常生活援助の工夫をした。個室隔離の状況には、プライバシーが保たれる環境という一面があった。開拓利用の段階では、患者は身体的・精神的ケアとしてのシャワー介助など、各勤務帯の訪室した看護師を活用していた。患者の身体的な回復と共に、看護師は訪室頻度を減らし、トイレ歩行を部屋のドアから見守るといった立ち位置の物理的な距離を置いたことも関係構築のプロセスからみると前進となった。問題解決の段階では、家族の希望と医師からの説明状況を確認、新たな問題は生じることなく退院に至った。【考察】COVID-19 患者の看護では、個室隔離、FullPPE の装着といった高度の感染対策により患者との関わりが作業的・業務的に陥り、患者看護師関係は希薄なままのように考えられ得る。しかし、このような特殊な環境であっても、患者と看護師の関係構築は、初めての挨拶から日々のケアを通し、ペプロウの理論に沿って問題解決の段階まで進んでいたと考えられる。患者は話す内容やニードの変化があり、看護師は患者へ関心を向けた理解の深まりといった変化があった。FullPPE を装着した看護師が患者との関わりを通して担った役割、個室隔離の環境が与える影響も明らかになった。患者の置かれた状況の特殊性の理解は、COVID-19 の入院患者の看護に役立つ情報となり得る。