第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

Presentation information

ポスター

ポスター10群:採用者・異動者への教育

Fri. Sep 2, 2022 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (206)

座長:亀島 加代

[ポスターS-10-4] 精神科看護における新卒看護師へのモデリング学習の導入と効果

-A病院での研修プログラムの評価から-

市川 貴志 (静岡県立こころの医療センター)

Keywords:精神科看護、継続教育、モデリング

【目的】ベテラン看護師の直観や経験の多くは、新卒看護師などへ口頭や行動として示すことで実践として継承されている。「見る/実践の理由を知る」という学習を構造化することで、実践の継承が円滑に行われ、実践能力の向上につながることが推察される。このことから A 病院では、新卒看護師に対して社会的模倣(モデリング)による学習プログラム(モデリング研修)を行った。本研究は、実施したモデリング研修の効果を明らかにするとともに、今後の展望について考察することを目的に実施した。【方法】モデリング研修は、新卒看護師の精神科看護に対するレディネスを高め、職場適応を支援することを目的とし、接遇、医療安全、コミュニケーションについて知識の教授を行った後に、各病棟で指導者によるモデリング研修を行った。2021 年度に A 病院に入職し、モデリング研修を受けた新卒看護師を対象に半構造化面接を行い、質的帰納的に分析を行った。本研究は、A 病院臨床倫理委員会による承認(承認番号:R3-1)を得て実施した。【結果】研究参加者 7 名の語りを分析した結果、649 コードを抽出し、16 サブカテゴリーと 5 カテゴリーが生成された。新卒看護師は、モデリング研修を始めた初期は気づくことができなかった、指導者の行動やその理由について、《繰り返し見聞きすることで多面的な気づきを得る》ことをしていた。しかし、《医療安全についてイメージしづらい》ことも語った。また、入職当初は患者と関わることに対して緊張感を持っているが、《精神科に対する緊張感が徐々に軽減する》ことや、複数の指導者の多様な実践を見ることで、モデリング研修後の自分自身の実践をイメージし、《自分の実践に繋がる選択肢を得る》ことをしていた。一方、《実践することで学びが統合されると感じる》場面もあったと話した。【考察】モデリング研修により、患者と関わることへの緊張感が軽減し、業務や患者との日常的なコミュニケーションについて理解できたことは、精神科看護へのレディネスを高めるというプログラムの目的に対して効果があったと考える。しかし、医療安全については学習効果が低いことも示唆されており、本研究結果を踏まえて学習の焦点化を行う必要がある。今後、新卒看護師の「見る/実践の理由を知る」能動的な学習が定着するかについて、縦断的に観察していくことが必要である。