[ポスターS-10-3] 既卒看護師を対象とした看護研究の動向
Keywords:既卒看護師、中途採用看護師、文献検討
【目的】離職した看護師が再就職し、既卒看護師として職場定着を促すことは看護師の人員確保において重要である。その一助とするために、本研究は既卒看護師(中途採用看護師)に着目し、既卒看護師を対象とした研究の動向を明らかにすることを目的とした。【方法】医学中央雑誌 web 版(ver.5)で「既卒」と「中途採用」をキーワードとし、絞り込み条件を「原著論文」「看護文献」「会議録を除く」「本文あり」と設定して各々検索した。その後、精読し本研究の目的に不適当な論文を除き対象文献を熟読し、マトリックス方式にて文献レビューを行なった。【結果】対象となる文献数は「既卒」では 13 件、「中途採用」では 27 件であった。年代別では 2009 年~ 2013 年が 13 件、2014 年~ 2018 年が 22 件、2019年~ 2021 年が 5 件であった。研究結果からカテゴリー分類すると、教育方法の考案評価が 17 件、心理的支援が 12 件、看護管理が 9 件、文献検討が 2 件であった。部署別では、クリティカル部門が 2 件、精神科部門が 7 件、神経・筋難病部門が 1 件、重症心身障害児部門で 1 件で、部署記載無しが 29件であった。【考察】日本看護協会が開示している「2020 年病院看護実態調査」によると、既卒看護師の離職率は 2008年で 20.8%、2019 年で 16.4% とほぼ横ばいの推移である。新卒看護師の離職率は 2008 年で 8.9%、2019 年で 8.6% と既卒看護師の半分以下である。比較すると既卒看護師の離職率は高値であり、既卒看護師の職場定着促進のための教育プログラムに関する検討は今後さらに必要であると考えられる。部署別では精神科など専門性の高い部署での検討が多く見られた。これらの領域では教育方法の熟慮が必要であり、検討研究がされていると考える。心理的支援は、戸惑いや困難の要因分析が多く見られた。これは、経験者故のプレッシャーや前施設との違いによる混乱などの要因を明らかにし、具体的な支援に繋げていく一助にしていると考えた。また、経時的に変化していく困難を理解することで職場環境に適応するための支援の必要性が明らかになった。看護管理に関する文献は看護管理者などを対象として検討しており、環境面や社会面を含めた支援が必要と述べている文献が多く見られた。これは各々のキャリアに応じて職場定着推進の要因の理解と働きかけが必要と考える。