[ポスターS-11-1] 身体拘束患者のADL 低下予防を目指して
-身体拘束患者に対する看護介入を振り返る-
Keywords:身体拘束、認知症、看護介入
【目的】身体拘束患者に対する看護介入の現状と課題を明確にする。【方法】研究デザインは後ろ向き観察研究で、A 病院B 病棟で 2020 年 5 月~ 2021 年 3 月に身体拘束を必要とされた 75 歳以上の患者を対象に電子カルテより 1. 属性(年齢、性別、疾患)、2. 入院前と退院時の ADL、3. 拘束の種類(体幹ベルト、ミトン手袋、四肢抑制)と期間、4. 理学療法士によるリハビリ介入の有無と開始時期、5. 看護師による ADL低下予防のための介入(付き添い歩行、車椅子移乗、上肢の運動、下肢の運動、ギャッチアップ)の有無と開始時期を収集し、ADL 低下群と維持群に分けて t 検定を行った。本研究を実施する旨のポスターを院内に提示し、不参加を申し出ることが可能であり、それにより不利益は生じないことを示した(包括同意)。なお A 病院看護部倫理委員会の承認を得た。【結果】対象は 63 名で平均年齢は 85(SD6.1)歳で、男性が 34 名、女性が 29 名であった。認知症が 19 名(30.2%)いた。ADL 低下群は 26 名で維持群は 37 名だった。t 検定の結果、ADL の低下群は入院期間(t=3.384, p=0.001)ミトン拘束期間(t=2.739, p=0.008)体幹ベルト拘束期間(t=2.402, p=0.019)が有意に長かった。一方、ADL の低下群は付き添い歩行回数(t=2.308, p=0.040)車椅子移乗回数(t=2.320, p=0.026)下肢の運動回数(t=3.514, p=0.003)が有意に多かった。【考察】身体拘束の問題点として寝たきりになることが言われており「身体拘束ゼロへの手引き」でも身体拘束は最小限に留めることが推奨されている。本研究でも身体拘束の期間が長いほど ADL が低下するという結果が示された。しかし、看護師は ADL の低下群により多くの介入をしており、身体拘束の低減と入院期間の長期化が予想される患者には早期から ADL 低下予防の介入をし、ADL が下がらないように努めていることが示唆された。上下肢の運動は ADL 低下予防と結びつきがあると言われている。また山内は、筋力の程度によりケアは変更する必要性があると言う。今後は ADL維持向上のために患者に合った上下肢のリハビリについて検討していきたい。同時に、リハビリは日常生活を整える支援にも繋がり、ADL 低下予防だけでなく認知症患者へのケアにも繋がっていくと考える。