[ポスターS-11-5] 身体拘束に着目した自己抜去事例の分析
Keywords:身体拘束、自己抜去、安全
【目的】臨床において身体拘束は、「してはいけない」という原則は知っていても、患者の安全確保を目的に「せざるを得ない状況」を優先する事例も少なくない.2020 年度 DiNQLⓇデータでは、A 病院の身体拘束実施患者割合は高い現状がある.そこで、身体拘束軽減に向け、自己抜去事例を身体拘束に着目し分析することで、現状での課題を明らかにする.【方法】2020 年 4 月から 12 月の期間に、A 病院のインシデントレポートとして提出されている事例から自己抜去事例を抽出し共通項目についての分析を行った.レポートは個人情報を削除の上データ処理を行い、個人が特定されないよう配慮した.A 病院看護部倫理審査委員会の承認を得て実施した. 【 結果】9 か月の期間内で 155 例の自己抜去事例を認めた.発生時間帯・男女差・年齢に有意差を認めた.自己抜去されたデバイスは胃管が最も多かった.身体拘束中の自己抜去が多く、挿入されたデバイスにより有意差を認め、挿管チューブ、胃管に多かった.また、自己抜去後はリスクレベルに関わらず身体拘束が検討される事例が多く、特に観血的動脈ライン・胃管で検討される事例が多かった.身体拘束をしていない事例での自己抜去の約半数で対策として身体拘束が検討された.【考察】A 病院における自己抜去事例の特徴として、「身体拘束中の自己抜去が多い」、「身体拘束をしないで自己抜去された場合も、事故後の対策として身体拘束を検討する事例が半数に及ぶ」、「デバイス別に着目すると、自己抜去の際に生命の危機に陥る可能性のあるデバイスと胃管は、同等の対応がなされている」という 3 点が挙げられる.自己抜去予防の対策として、身体拘束が第 1 選択となる傾向が強いことが考えられる.さらに、これらの特徴は、同様の状態の患者への身体拘束に繋がる.また、自己抜去のリスクのアセスメントが行えているにもかかわらず自己抜去に繋がっているため,対策の見直しが課題として挙げられる.最も自己抜去が多い胃管に着目すると、3 原則の「切迫性」が十分検討されていないことが推測される.これは、自己抜去後の業務量や医師への依頼に対する精神的負担も影響を与えている可能性がある.患者の安全と安楽の両方の視点から身体拘束の必要性を検討し、開始基準、代替え案、拘束中の看護に対する対策が必要となる.