[ポスターS-11-4] 身体拘束低減に向けたリンクナースの活用と教育の効果
Keywords:身体拘束、リンクナース育成、倫理教育
【目的】A 病院の身体拘束実施割合は、全国と比較しても高い傾向にある . そこで、身体拘束低減の取り組みとして、A病院の看護部内にせん妄・認知症ケアワーキングを立ち上げた.各部署のリンクナースから教育的な関わりを持つことにより、不必要な身体拘束実施の低減に繋げることを目的とし、活動から効果を図り、今後の課題を明らかにする.【方法】各部署のリンクナースの選出方法は、病棟看護師で認知症ケア加算の要件に必要な研修受講終了者とした.せん妄・認知症患者への看護や e- ラーニングで身体拘束の学習会を実施 . さらに、身体拘束の三原則に則ったカンファレンスを各部署で実施した.その効果を知るために Web によるアンケート調査を実施し、2020 年度データとΧ二乗検定による比較をした.分析はSPSSⓇver26 を用いた.質問項目は、日本集中治療学会医学会看護部会身体拘束判断基準フローチャートを基に作成した.研究は、個人が特定されないように配慮し、A 病院看護部倫理審査会の承認を得て実施した.【結果】 2 年間で延べ 754 名より回答が得られた.前後比較するにあたり、属性に有意差はなかった.身体拘束の判断基準に「うつ・認知症の既往歴」を選択したスタッフは有意に低下した.せん妄や身体拘束の三原則に関わる項目には有意差はなかった.また、倫理教育受講の有無による身体拘束実施の判断基準に有意差はなかった.教育前後で身体拘束実施の判断の迷いに有意差はなかった.【考察】A 病院の看護師の身体拘束に対する判断基準として「うつ・認知症の既往」に有意差を認めた.これは、リンクナースがうつ・認知症患者の看護に関する教育的な働きかけをしたことにより、うつ・認知症患者の理解が深まったことが影響したと考えられる.「せん妄の有無」に有意差がない要因は、スケールの活用などによる統一した認識の不足が推察される.身体拘束の三原則の「切迫性」に着目し、デバイスの有無について比較すると、生命の維持に関連するかに関わらず、教育前後で有意差を認めなかった.そのため、カンファレンスでの身体拘束の三原則に則った検討が効果的でない可能性が示唆され、判断への迷いに繋がっていると考えられる.今後の課題として、三原則に則った検討が行われるように「代替案」の提示や「切迫性」や「一時性」の判断が共通認識で検討ができるよう、身体拘束に関する院内基準の整備が必要となる.