第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

Presentation information

ポスター

ポスター11群:身体拘束・行動制限と看護

Fri. Sep 2, 2022 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場 (206)

座長:松本 志保子

[ポスターS-11-3] 急性期病院における身体拘束低減に向けた取り組み実施後の看護師のジレンマ

古屋 曜子, 島田 奈津美, 村田 文明, 松尾 正人, 鈴木 英子, 野澤 陽子 (順天堂大学医学部附属静岡病院)

Keywords:急性期病院、身体拘束、ジレンマ

【目的】急性期病院における身体拘束低減に向けた取り組み実施後の看護師のジレンマの変化を明らかにし、今後の活動に対する示唆を得る。【方法】A 病院に勤務する病棟看護師を対象に、看護倫理や身体拘束の研修会、身体拘束早期解除に向けたカンファレンスを推進し、身体拘束実施に対して感じるジレンマについてのアンケート調査を実施。身体拘束におけるジレンマを自由記載した結果から、ジレンマをカテゴリー分類する。分類したジレンマを前年度のアンケート結果と比較し、変化を明らかにする。倫理的配慮として、得られたデータは個人が特定されないように配慮した。発表にあたり、所属する看護部の許可を得た。本演題発表に関連して開示すべき利益相反関係にある企業等はない。【結果】アンケート回答数 395 名(前年度 359 名)回収率 73%。身体拘束に対するジレンマへの記載数は 396 件(前年度 285 件)。身体拘束に対するジレンマは 9 のカテゴリーと 23 のサブカテゴリーに分類された。記載数の上位順に『身体拘束の判断』『個々の倫理観』『リスク発生への懸念』『医療資源』『治療に関連した身体拘束』『患者の状態』『身体拘束中の看護』『職場風土』であった。前年度に最も記載数が多かった『医療資源』は、「マンパワー不足」が 56 件から 29 件に減少し、新たなサブカテゴリーとして「医療者の都合」が挙げられた。記載数が増えたサブカテゴリーは「患者の希望が叶えられないことへの葛藤」「身体拘束開始・解除の判断」「治療を優先とする身体拘束」などであった。【考察】ジレンマに対する記載数は前年度を上回り、身体拘束に対する意識の高まりを意味していると考える。これまでの医療優先の環境や忙しさを理由に、身体拘束をやむを得ずとしていた風潮から、「医療者の都合」「治療を優先する身体拘束」に対してジレンマを抱え、「患者の希望を叶えられないことへの葛藤」を感じる看護師が増えている。このことから、急性期病院であっても身体拘束を当たり前とせず、患者の希望を叶えたいと考える看護師が育ってきていることが推測され、教育的な関わりの成果であると考えられる。しかし、カンファレンスを行っていても「身体拘束開始・解除の判断」に迷うスタッフが増えていることから、身体拘束開始・解除の判断基準が明確でないことを意味しており、院内システムの整備が必要であることが示唆された。