[ポスターS-2-3] 転倒により骨折した糖尿病患者と非糖尿病患者の転倒要因の違いに関する調査
Keywords:糖尿病、転倒、転倒スコア
【目的】転倒により骨折した糖尿病患者と非糖尿病患者の異なる転倒要因を明らかにする。【方法】対象者はA病棟に転倒により骨折し入院した61名である。電子カルテより対象者の年齢、性別、身長、体重、BMI、転倒した時間、既往歴、HbA1c、家族構成について情報を得た。転倒スコア(Fall risk index:FRI)21項目を用いて対象者に聞き取り調査を行った。得られたデータはMann-WhitneyのU検定を使用し分析した。倫理的配慮として対象者への聞き取り調査は疼痛や術後の経過に配慮し、書面にて調査目的を明示し、調査への参加を拒否しても不利益を受けないこと、個人情報や得られたデータは本研究以外に使用しないことなどを説明し同意・署名をいただいた。当該病院の倫理審査委員会の承認を得た。【結果】全対象者のうち糖尿病群は13名、非糖尿病群は48名であった。平均年齢は糖尿病群が77.5±8.8歳、非糖尿病群は77.6歳±10.5歳だった。HbA1cのみ有意差が得られた。家族構成では「常に同居」で糖尿病群の割合が高かった。FRI-21では「廊下、居間、玄関によけて通るものが置いてあるか」のみに有意差が得られた。非糖尿病群に比べ糖尿病群の割合が高かった項目は21項目中11項目あり、その中でも「つまずくことがある」「手すりにつかまらないと階段の上り下りが不可能」「杖を使っている」「タオルを固く絞ることが不可能」「毎日お薬を5種類以上飲んでいる」「家の中を歩くと暗く感じる」の項目で差が大きかった。【考察】糖尿病群の割合が高かった項目に着目すると、糖尿病の神経障害など合併症が対象の身体能力に影響していると考えられる項目が当てはまる。HbA1cに有意差が得られた背景からも血糖値のコントロールの必要性について継続した指導が必要である。家族構成からは平均年齢が両群ともに高齢であり同居家族の高齢化が背景にあると推測できる。家族背景を考慮し社会福祉サービス等の利用を含めた退院調整が退院指導の一環として必要である。FRI-21で有意差が得られた「廊下、居間、玄関によけて通るものがある」については本人のみが意識して改善できるものではなく、安全な生活環境の調整が必要であることが明らかとなった。家族も含めた再転倒予防への指導が今後必要と考えられる。