[ポスターS-3-1] 我が国におけるヤングケアラーに関する研究の動向分析
Keywords:ヤングケアラー、看護支援、文献レビュー
【目的】我が国におけるヤングケアラー(以下:YC)に関する研究動向を明らかにすること。本研究成果は,看護師が退院支援や訪問看護などのあらゆる場面で家族介護力を評価する際にYCの状況を把握し,YCに対する看護支援体制構築のための基礎資料となる。【方法】文献選定は,2021年12月に医中誌Web Ver.5を用い,キーワード「ヤングケアラー」で,論文種類を“原著論文”に限定して検索した。分析方法は,対象文献を精読し1)研究デザイン,2)YCの定義,3)YCに関する研究成果について整理・分析を行った。倫理的配慮は,対象文献の内容抽出の際には論旨及び文脈の意味内容を損ねないよう研究者間で確認し配慮した。【結果】検索の結果13編が抽出された。発行年は,2010年,2014年,2016年が各1編,2018年,2019年が各2編,2020年,2021年が各3編であった。1)研究デザイン:質問紙調査や国民生活基礎調査による量的研究8編,面接調査による質的研究2編,ライフヒストリー研究1編,尺度開発1編,文献レビュー1編であった。2)YCの定義:日本ケアラー連盟「家族にケアを要する人がいる場合に,大人が担うようなケア責任を引き受け,家事や家族の世話,介護,感情面のサポートなどを行っている,18歳未満の子ども」の引用4編,S. Becker(2020)の引用3編,その他5編であった。3)YCに関する研究成果:YCの割合は高校生を対象にした研究で5.2~5.3%と報告されていた。また,精神疾患の親をもつ者を対象とした研究が3編あり,YCは“親の情緒的ケア”を57.8~61.5%が経験し,“手伝い以上の家事”を29.7~32.1%が経験していたことが報告されていた。【考察】YCに関する研究は近年増加傾向にある。本研究の実態調査の多くは教育機関を通して行われていた。日本ケアラー連盟の定義でYCは18歳未満とされており,小・中・高校生対象の調査はYCの割合など実態把握に有効である。YCのケアの実態を含めた生活全体の状況把握には,YCに関わる各専門職による連携が必要である。生活の場で家族を含めた対象者を支援する専門職として,今後,看護職のYCに対する認識や医療・福祉機関を通したYCの実態調査が必要である。