[ポスターS-3-5] 訪問看護事業所と介護保険施設の管理者の暴力・ハラスメント対策の要望
-自由記述の分析を通して-
Keywords:暴力・ハラスメント対策、管理者、要望、訪問看護事業所、介護保険施設
【目的】全国訪問看護事業協会の調査によると、約97%の管理者が暴力対策は必要と回答し、同時に約6割がどうしたらよいか分からないと回答した。暴力・ハラスメント対策を実施するには管理者の要望を把握することが重要だが十分に分かっていない。そこで本研究は訪問看護事業所と介護保険施設の管理者の暴力・ハラスメント対策の要望を明らかにすることを目的とした。【方法】2021年3月福岡県内の661訪問看護事業所、224介護保険施設の管理者885名に無記名自記式質問紙調査を実施した。各施設に郵送法で質問紙を配布後2週間で回収した。暴力・ハラスメント対策に対する要望について自由記述で回答を求めた。要望に関する記述部分を抜き出し、意味内容の類似性にそって分類しカテゴリーを抽出した。研究対象に目的、自由意思での研究参加、不参加でも不利益がないこと等を文書で説明し、研究参加の同意欄にチェックがある質問紙を分析した。なお、福岡県看護協会社会経済福祉委員長の所属施設の倫理委員会で承認を受けた。【結果】292訪問看護事業所、70介護保険施設から質問紙を回収し、暴力・ハラスメント対策に対する要望の自由記述に回答のあった97事例を分析した。97事例のうち、要望の記載なし等22件、自施設への意見やハラスメント26件、自施設の取り組み例の記載14件を除外した。管理者の暴力・ハラスメント対策の要望は事業形態の違いにより内容に大きな違いはなかった。<相談窓口の設置><暴力・ハラスメントマニュアルの作成と配布><暴力・ハラスメント研修><訪問時の安全確保のためのサービス><メンタルケアのためのクリニックとの連携><相談先の情報提供><社会への情報発信・啓発>の7カテゴリーが抽出された。【考察】管理者の要望で多かったのは暴力・ハラスメント対応の研修であった。事例検討会や多職種での研修要望があったが、訪問看護事業所や介護保険施設向けの定期的な研修が地域では開催されていない可能性があると考えた。またマニュアル作成と配布の要望も多かったが、すでにホームページ上で公開されている訪問看護師や介護保険施設向けのマニュアルの周知が十分ではなく、必要なマニュアルを管理者が入手できていない可能性がある。自施設の取り組みだけでは限界があり、相談窓口の設置や相談先の情報提供など早急に県内の暴力・ハラスメント対策を検討していく必要がある。