第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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ポスター

ポスター7群:健康回復・重症化予防におけるツールの活用

Fri. Sep 2, 2022 9:30 AM - 10:30 AM ポスター会場 (206)

座長:寺島 由美

[ポスターS-7-1] 心不全ノートを用いた指導と電話訪問の取り組み

吉田 和敏, 松浦 まゆみ, 佐藤 友美, 阿美 眞子, 菅野 仁美 (公立藤田総合病院)

Keywords:心不全ノート、電話訪問、在宅療養、セルフケア

【目的】A病棟では2019年4月より、在宅療養生活を見据えセルフケア確立を目標とし、「心不全ノート」を用いた患者指導と「電話訪問」を実践している。「電話訪問」では退院後から次回外来受診するまで対象の状態を確認し、外来と情報共有している。本研究では上記2点の取り組みによる心不全患者の再入院率や在宅療養期間の変化を明らかにすると共に、これらの有効性を検証する。尚、本研究はB病院看護研究倫理委員会の承認を得ている。対象者へは不利益を被らないように配慮し、該当者の実名や個人情報は伏せて保管、研究終了時には個人情報漏洩防止のため不要なデータは廃棄とした。【方法】2017年4月から2021年3月の心不全患者308名を対象に再入院率や退院後の在宅療養期間を集計する。また心不全ノートを用いた指導、電話訪問介入前後の2年間を比較する。【結果】再入院率:介入前2017年4月~2019年3月:19% 介入後2019年4月~2021年3月:25%在宅療養期間:介入前平均122日間 介入後平均214日。介入後、在宅療養中の対象者からの下肢浮腫や短期間の体重増加に対する外来相談、電話訪問時の不安の表出の報告が多く挙げられた。セルフケアが確立する事で早期治療の介入が可能となり、再入院までの期間延長に繋がった。【考察】今回の取り組みで再入院率の低下はなかったが、在宅療養期間は介入前と比較すると平均92日間延長している。オレムは「セルフケア行為は自分の健康状態を認識することから始まる」「セルフケア行為はその人が所有している科学的な健康の知識によっての影響を受ける」と述べている。心不全ノートの読み合わせは患者の疾患に対する知識と理解の程度を把握し、患者と共有することができる。共有することで治療としてのセルフケアの重要性を患者自身が理解を深め、塩分や水分の厳しい制限を守る要因になったと考える。退院後も電話訪問で看護師と経過を話すことで患者は自分の状態を確認することができた。在宅療養中の患者からの問い合わせが多くなり、早期に治療に取り組むことができたことは、患者が症状増悪時の対応を正しく理解していたと判断できる。心不全ノートを用いた指導はセルフケアの確立に繋がり、在宅療養生活を確認する医療者からの電話訪問は、心不全の重症化予防に繋がり、在宅療養期間を延ばすことができる。