[口演S-1-3] ボンディングに影響を与える母子の要因の検討
-産後 2 週間健診で「赤ちゃんへの気持ち質問票」を用いて-
Keywords:ボンディング、ボンディング障害、赤ちゃんへの気持ち質問票、育児支援チェックリスト、エジンバラ産後うつ病質問票
【目的】「育児支援チェックリスト」「エジンバラ産後うつ病質問票(以下、EPDS)」「赤ちゃんへの気持ち質問票(以下、MIBS-J)」を用いた産後 2 週間健診を行い、ボンディングに影響している母子の要因を検討する。【方法】A 病院へ産後 2 週間健診に来院した母親に「育児支援チェックリスト」、EPDS、MIBS-J を配布し、記入した質問票の結果をもとに面談を行った。研究目的と方法、個人が特定されないこと、研究参加の有無に関わらず不利益が生じないことを説明し、同意を得た。各質問票の結果を単純集計し、MIBS-J の各項目及び合計得点を、「育児支援チェックリスト」各項目と母親の基本属性ごとにMann-WhitneyU 検定を行った。【結果】対象者は 71 名、MIBS-J 平均得点は 1.9 ± 2.4 点であった。母親の基本属性の中で MIBS-J 得点が有意に低くなった項目は「母乳栄養」、有意に高くなった項目は「EPDS9 点以上」「帝王切開」「緊急帝王切開」「不妊治療後」「35 歳未満」「初産」「核家族」「育児支援チェックリスト質問 8 または質問 9 に 1 点以上」であった。【考察】母乳栄養のみで育児することで、喜びや自信に繋がり育児不安が軽減されると考える。一方で抑うつ状態にある母親は児の情緒を過剰に読み取る傾向があるとされ、EPDS 9 点以上の母親は、児の情緒を不満として受け止めやすい状態にあり、児への否定的感情を抱きやすい。帝王切開の場合、手術侵襲から思うように育児ができないことや、自分で産むことが出来なかったという「わだかまり」を感じることで、児への否定的感情を抱きやすい。中でも緊急帝王切開では、恐怖レベルがより高くなることで、出産体験が否定的なものになりやすく、抑うつ感情に繋がっていると考える。不妊治療後の場合、育児や母親像の具体的イメージができていない傾向にあるとされ、思い通りに育児できないことで児への否定的感情を抱きやすいと考える。35歳未満の母親や初産婦は経験不足から、核家族世帯では里帰り出産による環境変化や、相談相手が身近にいないことから、それぞれ育児不安が生じやすいと考える。不妊治療の増加や少子高齢化、核家族化が進む現代において、ボンディング形成を妨げる要因は多い。そのため客観的な要素、ツールとして 3 つの質問票を用い、母子の状態を総合的に評価し包括的な支援を行うことが必要である。