[口演S-1-4] 既婚の口唇裂・口蓋裂者の病気・結婚・次世代への捉え
Keywords:口唇裂・口蓋裂、既婚者、結婚、次世代
【目的】既婚の口唇裂・口蓋裂者の病気・結婚・次世代への捉えを明らかにし、支援策を検討する基礎資料とする。【方法】A 県口唇口蓋裂親の会を通じ紹介を受け、既婚の口唇裂・口蓋裂者を対象に、病気・結婚・次世代への捉えについて半構成的面接を行った。面接内容から逐語録を作成し内容を整理した。調査期間は 2017 年 9 月より 2018 年 1 月。本研究は、B 大学の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号 17-043)。【結果】対象者は、20 ~ 40 歳代の 5 名(男性 2 名、女性 3 名)、男性 1 名と女性 1 名は子どもを有していた。病気の捉えは、3 名は幼少期に、病気や治療の説明を納得のいくよう受けておらず、治療への苦痛や周囲から容姿を指摘されることに戸惑い自己否定感があった。しかし成長と共に自己の病気が理解できると自己否定感は減少していた。一方、 2 名は幼少期から母親らから病気や治療の説明を聞き納得し治療を受けることができ、周囲からの容姿に対する問い掛けにも対応できていた。結婚については、女性 2 名は結婚に躊躇する時期があったが、次第に自己の病気を理解できたことで変化していた。また全員が疾患についてパートナーや家族にどう説明したらよいか(時期や方法)悩んだが、パートナーの協力が支えだったとした。次世代への捉えは、全員が子どもへの遺伝を気にしている反面、同疾患が発生しても自己の経験を踏まえ対応でき、子どものよき理解者となれると認識していた。しかし子どもが同疾患である男性は、子どもに申し訳ないと自責の念を持つ事が子どもの心理的な成長へ悪影響を与えているのではないかと考えていた。【考察】自己の病気について幼少期から納得のいく説明を受けることは、自己肯定感を持ち治療を受けることにつながることが示唆された。また自己の容姿に対する周囲の問い掛けに返答できることがいじめへの回避にもつながると考える。当該疾患の治療環境は医療の進歩によって変化しているが、何度もの手術や長期間の治療を乗り越えてきた体験談を、現在治療中の当事者や家族に伝えていくことで様々な悩みや不安を軽減する一助となると考える。遺伝等に関する情報について、当事者は、次世代への発生頻度を高く捉える傾向があり不安を感じる事は言うまでもない。正確な遺伝情報の提供などの介入を検討する必要がある。本研究は科学研究補助金基盤研究(C) 17K12388 の助成を受けて実施した。