第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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口演

口演3群 心身の健やかな成育への支援

Thu. Sep 1, 2022 11:30 AM - 12:30 PM 口演会場2 (204)

座長:渡邊 輝子

[口演S-3-2] 精神科児童思春期病棟を経験した熟練看護師の退行の捉えと介入

村島 正俊, 島田 祐二, 日高 華 (長崎県精神医療センター)

Keywords:精神科児童思春期病棟、熟練看護師、退行

【目的】熟練看護師が精神科児童思春期患者のどのような言動を退行と捉え、どのような介入を行っているのかを明らかにすること。【方法】1. 質的記述的研究デザイン 2. 研究期間 2021 年 8 月から同年 11 月 3. 研究対象者は精神科臨床経験 5 年以上で、かつ精神科児童思春期病棟を 1 年以上経験した A 病院の看護師 4. 倫理的配慮として、参加は自由意思とし、辞退は可能であり、それによる不利益を被らないこと、研究者の守秘義務などについて文書で説明して書面で承諾を得た。5. 調査・分析方法は、半構造化面接法にてデータを収集して逐語録とし、退行と捉えた児の言動や態度と、それに対する看護介入の記述をカテゴリー化した。カテゴリー間の関連性を考慮して、熟練看護師の退行の捉えと介入の全体像を読み取った。【結果】6 名に面接を実施して、359 コードから 150 のサブカテゴリーを経て、15 のカテゴリーを抽出した。以下、全体像を述べる。〈 〉はカテゴリーを示す。児にとって〈退行は自分を守る防衛のひとつ〉であり、〈承認や安心感を求めて退行〉する。熟練看護師は、児の退行による言動を、〈ストレス対処能力の低さがある〉〈看護師への関わりを過剰に求める〉〈発達段階に沿わない言動〉〈セルフケアを看護師に委ねることで生じる退行〉〈周囲に影響のある行動化を意識的にする〉と認識していた。それに対し、熟練看護師は〈退行と症状は異なるもの〉と児の言動を見定めて、〈退行だけでは成長の妨げになる〉ため、〈介入のタイミングを見極める〉ことをしていた。介入においては、〈一定の心理的な距離を置いた介入〉にて客観性を保ち、退行による言動に対して、〈看護師の見たままを客観的に返す〉ことや、〈不適切な言動に距離を置いて実感させる〉ことをしていた。また、〈落ち着いているときに振り返る〉ことで、〈適切な対処を促す〉ようにして、児の成長を支援していた。【考察】入院治療が必要な児は虐待を経験し、愛着の形成が不十分で、対人関係技能やストレス対処方法を十分に獲得してこなかったことが多い。そのため、入院して安心できる環境では退行して当然、という熟練看護師の捉え方があった。しかし、そうした退行を助長しないように関わりながらも、退行による行動では他者と良好な関係を築くことが難しいことを示し、ともに言動を振り返ることで、成長への足がかりを模索していた。