[口演S-3-4] 児童精神科病棟に入院する患児の長期の隔離に関連する要因
Keywords:児童精神科、隔離、倫理調整
【目的】児童精神科に入院して隔離を受けた患児の隔離の長期化に関連する要因を明らかにすること。このことにより隔離の最小化や隔離の長期化を防止するためのケアについて示唆を得ることができると考える。【方法】研究デザイン:観察研究(症例対照研究)。対象者:2012 年 8 月 1 日~ 2020年 7 月 31 日の期間、1 施設の精神科病院児童精神科病棟に入院中に隔離を受けた 15 歳以下の者。データ収集方法:対象者の電子カルテから、隔離日数、年齢、性別、身長、体重、診断、IQ、知的障害の有無、被虐待体験の有無、性的被害の有無、両親、居住形態、入院形態、入院回数、入院前の警察介入、盗み、入院前の自傷、入院前の自殺企図、隔離開始後 14 日間の自傷・暴力・自殺企図・喧嘩、行動制限を開始した時点での入院日数、隔離開始時の点滴等の有無を抽出した。分析方法:対象者を短期群(30 日以下)と長期群(31 日以上)の 2 群に分類し、Welch の t 検定、マン・ホイットニーの U 検定、Fisher の正確確率検定、ロジスティック回帰分析を実施した(*p<0.05、**p<0.01)。倫理的配慮:所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。また、データ収集をする病院のホームページに研究の説明文を掲載し、オプトアウトの形式をとった。【結果】対象者は 142 名(男性 70 名、女性 72 名)であり、平均年齢は 12.6 歳だった。短期群は 71 名、長期群は 71 名だった。隔離日数(中央値)は短期群が 10 日、長期群が 84 日だった。長期群は短期群に比べて年齢が低く*、体重が軽かった *。また、入院から隔離開始までの日数が長かった **。そして、長期群は短期群に比べて入院前に自殺企図が無い割合が高かった *。ロジスティック回帰分析の結果、隔離長期化について入院前に自殺企図が有るのオッズ比は 0.464* であった。【考察】長期群は短期群と比べて入院から隔離開始までの日数が長かった。これは入院当初に入院の拒否やホームシックによる衝動行為などによって隔離が必要になった場合とは違い、援助者が患者を十分に観察し病理を理解した後での隔離であり、病理の根本的な治療と並行するために隔離が長期化すると考えられた。児童精神科での隔離は成人患者の隔離とは様相が違うこと、そのために児童精神科特有の隔離時のケアや倫理調整が必要と考えられた。