第53回(2022年度)日本看護学会学術集会 札幌

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口演

口演4群 精神疾患をもつ患者の看護

Thu. Sep 1, 2022 2:00 PM - 3:00 PM 口演会場2 (204)

座長:熊谷 恒子

[口演S-4-1] 精神科スーパー救急病棟における疾患特性と転倒転落の関連性

-疾患特性に着目した看護ケアによる転倒転落予防の試み-

大野 晋平, 平井 尚子, 浦口 美穂 (昭和大学附属烏山病院)

Keywords:精神科スーパー救急病棟、転倒転落、疾患特性看護ケア

【目的】A 病院は精神科単科の大学病院であり、転倒転落アセスメントスコアシートを使用しリスクの評価を行なっている。B 病棟において、2020 年度の転倒転落件数は 42 件であった。そのうち危険度 1 の患者の転倒転落は 15 件、患者影響度分類でみると、レベル 3a 以上の転倒転落 6 件のうち 3 件が危険度 1 の患者であった。そこで、なぜ危険度 1 の患者が転倒を起こすのか事例を分析した。その結果、危険度が低く評価されていたのは疾患特性が反映されていない可能性が考えられた。これらのことから、転倒転落予防を目的として疾患特性と転倒転落の関連性を明らかにしていく。【方法】前年度の転倒転落インシデントを分析し、結果を勉強会という形で病棟スタッフへフィードバックした。その分析結果を用いてどのような看護ケアを導入すれば転倒転落を予防できるのかを話し合った。結果、1. 転倒転落を起こしやすいと考えられた疾患(うつ病、身体表現性障害、アルコール依存症、解離性障害)の患者に入院時から個別性のある看護ケアの提供、2. 転倒転落予防実施確認表の導入が考えられた。【結果】前年度の 42 件に対し 21 件に減少した。前期は 19 件、新たな転倒転落予防対策が開始された後期は 2 件であった。またレベル 3a 以上の事例は 1 件のみであった。【考察】入院母数の多い統合失調症に関してはB 病棟の過去 3 年分の転倒転落に関するインシデントを集計した結果、例年転倒転落数、事故に繋がることが少ない事が分かり、その他の疾患と比較し対応が取れていると考えた。うつ病、身体表現性障害の患者は、自信の辛さを誇張された表現で医療者へ訴える事が多く、その表現方法が転倒転落に繋がっていると考えられた。また解離性障害の患者は不安耐性が著しく低く、医療者が予測できない突発的なタイミングで症状が出現するため、打撲や裂傷といった事故に繋がりやすいと考えられた。これらのことから、疾患特性を踏まえ具体的な看護介入方法を検討し、1日 1 回時間を設定し面談の場を作る、患者と共に薬剤の評価を行ない医師へフィードバックしていく等を行ない、患者が不安を軽減し安心感を持てるよう意図したケアを提供した。これらの事に加え、勉強会や日々の看護ケアを通し、疾患特性から考え直す機会が増えた事でスタッフ全体の転倒転落に対する意識の向上が転倒転落数減少に寄与したと考えられた。