[口演S-4-2] 精神科スーパー救急病棟における疾患特性に着目した転倒転落リスクの検討
Keywords:精神科スーパー救急病棟、転倒転落、疾患特性症状
【目的】医療の質を評価するうえで、安全管理としての「転倒転落」は至極重要な要素である。病院全体における転倒転落事故は医療事故全体の 22 ~ 27%を占めており転倒転落の 2%程度に重度(手術以上の外傷)の損傷が発生している(日本転倒転落予防学会、2020)。A 病院は精神科単科の大学病院である。A 病院の 2020 年度転倒転落発生件数は 239 件で、スーパー救急病棟であるB 病棟の発生件数は 42 件であった。そのうち転倒転落アセスメントスコアシートで危険度Ⅰの患者の発生件数は 15 件であり全体の 36%を占めていた。危険度Ⅰにも関わらず転倒転落が発生しているためにその要因を検討すると、不安焦燥感や衝動性、解離といった疾患特性の影響が考えられ、疾患特性を考慮したケアで症状を軽減することが転倒転落予防の一助となると仮説を立てた。医学中央雑誌 Web を用いて「精神科 転倒転落 看護」で先行文献検索を行った結果(2020 年 8 月 22 日時点)、270 件もの研究成果が報告されていた。しかし疾患や精神疾患特性によるリスクを査定し、状態に応じた看護ケアで軽減することに着目した転倒転落リスクを検証する研究は見当たらない。そこで本研究では、疾患特性に着目した転倒転落リスクを明らかにする。【方法】B 病棟の 2020 年度の転倒転落インシデントレポートと転倒転落事例の診療録を分析する。また、独自に開発した「転倒転落分析ワークシート」に沿って情報整理し評価を行った。【結果】B 病棟における転倒転落インシデントは 42件で、2 回以上転倒転落を繰り返している患者が 6 名で計 20件発生していた。疾患内訳は、解離性障害(7 件)、アルコール依存症(6 件)、身体表現性障害(3 件)、統合失調症(2 件)、うつ病(2 件)の 5 疾患であった。症状として不安焦燥感、衝動性、解離などの疾患特性が挙げられ、すべての事例において転倒転落リスク危険度はⅠであった。【考察】スーパー救急病棟の安全管理として、早期に転倒転落予防対策を施すために、5 疾患や、疾患特性も意識しながら状態に応じた個別的看護ケアを実践することがその予防に繋がると考えられる。転倒転落アセスメントスコアシートでは測れない予防対策として疾患特性を考慮できれば転倒転落リスクの低減、対策導出に寄与することが期待できる。